7月7日の第20節・讃岐戦(◯1-0)で直接FKを決め、勝利に貢献した富所悠。5月の明治安田J3リーグベストゴールにも選出された第14節の宮崎戦(◯2-1)のとき以来、今季2本目の直接FKによる得点を決めた。
小学生のときからFKを蹴る場面が多かったという富所は、「昔から注目されている場面で蹴るのは好きで、緊張することもなくフィーリングを大事に自分のテンポでいつも蹴っていた」と話す。それゆえ「特別練習していたわけではないですが小さい頃から割とFKを決めてて、その成功体験が今も生きているのかな」と、キッカーを務める場面では常にポジティブ思考が生まれ、勝負強いプレーへとつながっている。
自身、FKの蹴り方は2~3種類ほどだという。その多寡にかかわりなく、「そこまで壁を気にせずに同じ蹴り方で、同じところへ蹴ることができる」ブレの少なさが富所の強みである。とはいえ普段からFKの練習に励むような姿はほとんどない。それは、パス練習やシュート練習といった日常のトレーニングからキックの強弱とカーブのかかり具合など現状のボールの軌道をアップデートし続けているからで、だからこそ軸のあるボールを蹴り続けることができる。それが今、チームの得点源となっているのだ。
昨季までは主にボランチでプレーしていた富所は、「ゴールを奪いたいという気持ちがなかなか生まれにくいポジションだった」がゆえ、FKの場面でも得点へのイメージをなかなかリンクさせにくく、他の選手にキッカーを譲っていた。しかし今年はインサイドハーフや左サイドハーフ、さらにFWにも立つ機会が増え、得点への執着心も去年とは違う。今年はすでに7ゴールを決め、18シーズン以来の二桁ゴールも目前。さらに、キャリア最多の13ゴールを決めた17シーズンを超える可能性もあり、得点に対する貪欲さを再び思い出したからこそFKの場面で見せる彼の牙は鋭利である。
「特別難しく考えず、楽しくプレーすることに専念したい」というナチュラルな姿を見せれば見せるほど、獅子奮迅の富所の輝きは今後も増していくはずだ。
Reported by 仲本兼進