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【取材ノート:福岡】悔しさを糧に。より上を目指すための田代雅也の決意

2024年7月9日(火)


スコアは0-1。明治安田J1リーグ第22節京都戦の後半アディショナルタイム、長谷部茂利監督は同点に追いつくべくパワープレーを決断する。その意を受け、センターバックの田代雅也は最前線へと駆け上がった。

その采配は結果にすぐ表れる。90+3分、右サイドでシャハブ ザヘディが粘り強くボールをキープ。サポートに入った小田逸稀はパスを受けると右足でクロスボールを送る。「クロスが入ってくるのを待っていた」。ファーサイドに構える背番号37は高い打点のヘッドでボールをしっかりと捉え、ゴールネットを揺らした。その瞬間、ベスト電器スタジアムに沸き上がったのは「逆転できる」という雰囲気。その勢いを信じ、長谷部監督は勝負に出た。勝点1に止まることなく、勝点3を目指して田代を最前線に残すパワープレーを継続。しかし、それは結果として裏目に出てしまう。90+9分にカウンターから失点。リーグ戦負けなしは6で止まった。

「ちょっと相手に流れを与えるようなきっかけをこちら側から与えたという試合。向こうの選手が(流れを)生み出したというよりかはこっちが与えてしまったかなという感じでそこはすごく相手どうこうというより自分たちの問題かなと思います」

最終盤のわずか6分間で揺れ動いた劇的な展開のゲーム。田代が問題にしているのはその時間帯に限った話ではない。そんな展開になる前にもっと自分たちにやれることがあったのではないか。彼の言葉の中には悔しさが詰まっていた。


口調はいつも冷静。でも、発する言葉は熱い。そんな田代が福岡にやってきたのは昨年の7月。力強さとクレバーさを兼ね備えた守備だけでなく、効果的なフィードでもチームに貢献し、今シーズンはここまでリーグ戦全試合に先発出場。3バックの左右だけでなく、大ケガで離脱中のキャプテン奈良竜樹に代わって中央でもプレーし、ディフェンスラインを統率する役目も担っている。ここまでリーグ最多のクリーンシート「10」を数える堅守の福岡に欠かせない存在は、長谷部監督をはじめとしたコーチングスタッフからはもちろん、サポーターからの信頼も厚く、今シーズンに入ってチャントを贈られた。「ありがたいですね。もうちょっと仕事できるように頑張りたい」。そんな想いが自分自身の成長へとつながり、チームの成長に貢献する原動力の一つとなっている。

シーズンは折り返しを迎え、これから対戦する各チームが「優勝」や「残留」など置かれた立場の中でそれぞれの目標に向かって、これまで以上に死に物狂いで勝利を奪いに来る。リーグ戦6位以上、カップ戦ベスト4以上を目指す福岡。チームの真価が問われるこれからの戦いについて田代は次のように考えている。

「6月は負けがなくて(勝点を)積み上げられた中で、7月は黒星からのスタートになったということで、改めて自分たちに矢印を向けないといけないタイミングでもありますし、天皇杯も(すぐ)来るので、そこはチームとして勝ち上がって上に行って目標を達成しないといけません。またすぐに週末にリーグ戦もあるので、どういうパフォーマンスをするのかというのを短い時間(間隔)で試合もあるので、より自分たちの色をどのように出していかないといけないというのを確認したいなと思います。

個人個人の自分勝手なプレーというわけではなくて、チームとして勝点3を取るために自分は何ができるのかというのを改めて僕も含めて考えなければいけないですし、それがどういうプレーなのかとか、どういう振る舞いなのかとか、どういうエリアでどういうプレー(が必要)なのかというのをもっともっと自分なりに掘り下げて、それぞれ(選手)が振り返ることが大事ですし、チームとしても振り返りが出てくるので、そこでどういうところを道標してくれるかというところ。もちろん、監督の采配もありますけど、監督の采配を正解にするのも僕たち選手の仕事なので監督を信じてそこに向かってそれぞれがやれることを100%でできる準備をするだけです」

チームの為に、今自分にできることを精一杯やり続ける。田代は強い眼差しで次なる戦いを見据えていた。

Reported by 武丸善章