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【取材ノート:藤枝】連敗を止め、再び上を目指す藤枝。トップ3との戦いで得た教訓と躍進へのカギ

2024年7月5日(金)
清水、横浜FC、長崎と今季の3強と言えるチームと続けざまに対戦して、3連敗に終わった藤枝。だが、前節では最下位の群馬に逆転勝ちして4試合ぶりの白星を挙げ(2-1)、自信を失っていないことを示した。これで順位も11位に上がり、6位の千葉とは勝点9差。残り16試合でプレーオフ圏内に食い込んでいく可能性はまだ残している。


だからこそ、今後のテーマは明確だ。ここまでの22試合ではトップ6のチームに対する勝利がなく、上位に勝ち切る力をチームとして確立していくことがもっとも重要になる。しかも、どんな形でも勝ちさえすればいいとは誰も考えていない。

須藤大輔監督が就任当初から掲げている「超攻撃的エンターテインメントサッカー」は、J3ではかなり表現することができていたが、昨年J2に昇格してからは存分に見せられているとは言えない。だが、けっしてその実現をあきらめているわけではない。

ただ、限られた戦力や強化費でJ2というタフなリーグで勝ち残っていくためには、「ハイライン、ハイプレス」や自分たちが圧倒的にボールを支配していくといった理想を追うだけでなく、現実的に戦うことも必要になってきた。J3時代に比べると、ロングボールの本数も、ハイプレスではなくミドルゾーンにブロックを敷いて守る時間も増えた。そうして昨年も今年も、理想と現実のバランスを相手や状況に応じて測りながら戦ってきた。

トップ3との戦いで痛感した上を目指すための課題

だがトップ3との連戦に敗れて、須藤監督もあらためて痛感することがあった。

「腰の引けた戦い方になってしまう時間が多かった。(自分たちのサッカーが)できないからといって弱者のサッカーをするんじゃなくて、できるようにしていかなければ(トップ3のような強豪には)ずっと勝てないままになってしまう」

今季を迎えるにあたって「周りから何と言われようとJ1昇格を目指す」と宣言し、今もそれはあきらめていない。だからこそ、自分たちのサッカーで上位を倒す力をつけていくことが欠かせないという結論に至った。

そのため今後の戦いでは、「臆病なサッカーではなく、我々らしいサッカーをベースにしながら結果を出していく。もちろん時間帯によっては慎重にならなければいけないけれども、割合としては少しずつ理想を表現できる方向に振っていきたい」(須藤監督)という方向性が明確になっている。

その意味では、群馬戦の前半は物足りなかった。ボール支配では上回ったが、攻め切る恐さはあまり見せられず、自分たちのミスから先制点を奪われた。

後半に1アシスト1ゴールして勝利の立役者となった西矢健人も「前半に失点してからスイッチが入るというのは、上位との試合の反省を生かせていなかった。立ち上がりから自分たちがもっとパワーを持って入るというところは、もっともっとできると思います」と改善の必要性を口にする。

ホーム3連戦で何を見せられるかに注目

その反省も含めて、3週間ぶりにホームに戻る今節の水戸戦は、ひとつ試金石となる。水戸は前線でも中盤でも厳しくプレッシャーをかけてくるチームだが、ボールを失ってカウンターを食らうことを怖れ、大きく蹴るだけになってしまったら自分たちのサッカーは表現できない。

だが逆に「プレッシャーをはがせば水戸のウィークポイントを突いていけると思いますし、しっかりパスを回して相手を走らせれば、この気候なので相手の体力を削っていけると思います」と、前節でケガから復帰した梶川諒太は言う。

強いプレッシャーがある中でも藤枝らしく全員が素早く良い立ち位置をとってパスをつなぎ、相手を揺さぶるジャブを打ち続けられるか。もちろんそこにリスクは伴うが、中継役として抜群の能力を持つ梶川の復帰は大きなプラスと言える。今年も猛暑となることは確定的なだけに、夏場で勝利を重ねていくためにも、彼が言うような展開に持ち込むことは欠かせない。

また、ボール支配率を増やすためには、ボールを失った際に素早く切り換えてカウンタープレスをかけ、即座に奪い返すことも重要になる。それはショートカウンターで自分たちのチャンスを増やすことにもつながり、それら2要素も“藤枝らしさ”の一端と言える。

ミスや隙を減らしてしぶとく勝点を重ねていくことと、自分たちの理想の割合を高めながら上位に勝つ力をつけていくこと。あえて二兎を追いながらプレーオフ圏内に駆け上がっていくことを目指す藤枝。

リーグ中断前には、天皇杯の鹿島戦も含めてホーム3連戦がある。まずはそこで自分たちのテーマをどれだけ形にできるかを楽しみにしたい。

Reported by 前島芳雄