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【取材ノート:今治】最古参の楠美圭史が示す不変のリーダーシップ

2024年6月29日(土)


首位の大宮アルディージャを追走し、自動昇格をうかがっていたチームは、4月の終わりから4連敗する大失速でプレーオフ圏外へ順位を落としてしまった。しかし、第15節・松本山雅FC戦に2-1で勝利し、連敗を止めてから2勝1分1敗。再び昇格争いに挑む勢いを取り戻しつつある。

松本戦の終盤に途中出場し、試合を締めくくるために力を尽くしたのが、チーム最古参の楠美圭史だ。東京ヴェルディからFC今治に加入したのは2017年。戦いの舞台はJFLだった。以来、攻守に闘志あふれるプレーを貫くボランチとして、そして強い責任感とリーダーシップを発揮するキャプテンとして、チームをけん引してきた。

今シーズンは、“多くを抱えすぎず、自身のプレーに専心してほしい”という首脳陣の考えから、キャプテンを退くことになった。今季ここまでの出場は3試合。だが、松本戦から4試合連続でベンチ入りと、復調するチームで存在感を放っている。

「これだけ試合に関われないのは久しぶりのこと。チームが苦しんでいるときに力になれない自分が悔しいけれど、自分と向き合ってやるしかないです。いつチャンスが来てもいいように、すべて成長につながると思って必死にやっています」

チームが置かれている状況を考えれば、一つになって前に進んでいくことが今は何より重要だ。その意味で、自身にベクトルを向けつつ、前を見すえる視線の確かさが、やはり頼もしい。

「チームが良くなっているのは間違いないけれど、まだ『これだ』というものを得られるところまでは行けていない。毎試合、それをつかみに行く作業をしています。シーズンの初めから、ボールを奪うところをずっとチームとしてチャレンジしています。だから一つ、二つといい形でボールを奪えてゴールにつながれば、手応えから自信になっていくはずです」

実際、前節のいわてグルージャ盛岡戦でチームは12本のシュートを放ち、相手のシュートを1本に抑えながら、スコアレスドローに終わった。ゴールが、大きなきっかけになるのは間違いない。

楠美自身、今季はトレーニングやトレーニングゲームで積極的にシュートに行く姿勢が際立つ。「点を取りたいと思って、チャレンジしています。だからこそ、試合のピッチに立ちたい。

今は、チームとしてやろうとしていることが、うまく行くための時期。奪ったゴールを全員で体を張って守り切って勝つようなゲームも、絶対、必要になってきます。もっとサッカーの質を高めていけると思っているからこそ、まずは近いポジションの選手たちと『あの場面は、こうした方がいいよね』と話し合いながら、小さいことから積み重ねていければ」

チームが良くなるために、できることはすべてやりたいという思いに、一点の曇りもない。立場は変われど、そのリーダーシップはやはり欠かすことができない。

Reported by 大中祐二