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【取材ノート:清水】まさかのアウェイ4連敗。清水はなぜアウェイで勝てないのか

2024年6月28日(金)
前半戦をホーム無敗(8勝1分)で折り返した清水だが、5月からアウェイで勝てなくなり、後半戦に入ったアウェイ連戦では愛媛に0-3、秋田に1-3と今季初の連敗を喫して、アウェイ4連敗。これでアウェイの勝敗は6勝0分6敗と五分の星になり、順位も長崎と横浜FCに抜かれて3位に落ちてしまった。

なぜホームとアウェイでこれほど明暗が分かれるのか、誰もが首をかしげている。もちろん、ホームのアイスタ(IAIスタジアム日本平)は、ピッチ状態もサポーターの応援もスタンドの臨場感も抜群で、それ自体が大きな後押しになることは間違いない。
ただ、J1ではホームのほうが勝てなかった年もあり、対戦相手もアイスタの芝の恩恵を受けているケースが見られた。だから、ホームでこれほど強さを見せられていることは、試合後の勝ちロコも楽しみにしているサポーターにとって、非常に喜ばしい状況と言える。

アウェイの難しさ以外の原因も

だからこそ余計にアウェイ4連敗が目立つ状況になっているが、その原因については、選手たちに聞いても明確な答えを見つけられているわけではない。

「ホームでもアウェイでも同じ流れで試合に臨めていると思いますが、相手の勢いというのは少なからずあると思います。ただ、アウェイでも前期は6勝していますし、直近のアウェイでの戦い方というところでチームを難しくさせてるだけだと思うので、下を向く必要はないと思います」(北川航也)

「個人的には(ホームとアウェイで)違いはないですし、チームとしてもアウェイに向けて100%の準備して試合に臨んでいるので、何かこれといった原因はわからないです。ただ、自分たちが思っている以上に相手は自分たちのホームでパワーを持ってやってくるので、先に失点してしまうと難しくなると思います」(山原怜音)

「モチベーションも戦術も何も変わっていないと思うんですけど、自分たちのコンディションという面では、身体が動くとか、頭が回るというところがいつも通りではないときもあるかなと思います。だから、アウェイゲームへの持っていき方とというのは、個人的にもっと工夫したいと思っています」(中村亮太朗)

それぞれに感じていることはあるが、それが決定的な理由とは言い切れない。また、アウェイだからという面以外で、今の清水にはケガ人等で苦しい要素がある。
とくに今季のスタートダッシュを支えたセンターバックコンビ=蓮川壮大と住吉ジェラニレショーンが欠場しているのは痛い。抜群の身体能力やスピードを生かして、守備に綻びや隙が出たところを個でカバーできる存在だからだ。直近2試合は、彼らが2人とも不在となった中で計6失点しており、失点の形を見ても堅守とは言えない状況になっている。そこはホーム、アウェイを問わず何とかしなければならない部分だろう。

「戦術の掛け算では……」

とくに戦術や守備の面に関しては、守護神・権田修一が示唆に富んだ話を聞かせてくれた。

「(アウェイで負けた)山口にしても愛媛にしても戦術的によく整備されていて、うちはそういうチームに弱いと思います。僕は、個の能力は足し算で、組織や戦術は掛け算だと思うんですよ。そういう意味では、うちは個の力の足し算では大きい数字になるけど、戦術の掛け算は大きいとは言えないと思います。でも組織として良いチームは、個の足し算はそんなに大きくなくても、戦術の掛け算で一気に上がりますよね」

「たとえば愛媛は、試合後の監督のコメントを見ても、うちには守備で隙がある、狙えるところがあるということで、しっかり準備してきて、狙っていた形で点を取った。それに対して、うちは十分な準備ができていなかった。僕らにはまだ改善の余地があると教えられた試合だったので、それを潰す作業というのはやっていかなければいけないと思います」(権田)

J1に戻った後のことを考えると、清水であっても個の力の足し算だけで生き残ることはできないだろう。その意味でも権田の指摘は筆者に刺さるものがあった。
今後の対戦はすべて今季2回目となるので、相手も清水対策は十分に練り、怖れることなく挑んでくるだろう。残り17試合はホームが10戦、アウェイが7戦というのは好材料だが、今のままではホームでの強さを今後も維持できるとは限らない。
だからこそ、秋葉忠宏監督も強い覚悟を口にする。

「順風満帆なばかりの人生はないのと同じで、優勝するには途中で苦しみや厳しさというのは必ずあると思っています。なかなかタイトルが獲れていないクラブですし、風邪をひくときもケガするときもあります。だからこそ、その時期に何をして、どう復活するか、その期間をいかに短くするかが大事だと思います。今は大いに苦しみながら、人間性やメンタリティも含めてフットボーラーとして問われる部分も多いと思うので、そこを鍛えながら乗り越えて、最後は必ず優勝して終わりたいと思います」(秋葉監督)

アウェイで勝てていないことを意識しすぎてナーバスになることは、むしろマイナスでしかない。それよりも、自分たちは戦術的にも精神的にもより強くなる余地があるという部分に目を向けながら、自力でこの苦境を乗り越えていくことを熱血指揮官は目指している。その過程での苦しみと、結果を勝ち取った後の自信は、チームの未来にとって大きな財産になっていくはずだ。

Reported by 前島芳雄