やはり絵になる。大仕事を事も無げにやってのけ、サポーターへ投げキッス。そんな姿が様になるのは、この男ぐらいだろう。千両役者、杉本健勇が劇的なゴールでチームを勝利へ導いた。
明治安田J3リーグ第18節、大宮アルディージャ対FC琉球戦は、大宮が2度先行したが、琉球も2度食らいつくという激戦。特に2度目の同点劇は、後半アディショナルタイムに入ってから。心が折れかかっても仕方のない状況だが、大宮の選手たちは違った。
提示されたアディショナルタイム6分をまもなく迎えようというタイミング。琉球DFが最終ラインでボールを持っていたところへ、藤井一志が猛プレス。こぼれ球を杉本が収めると、大宮のカウンターアタックが発動した。
一気に5人が琉球ゴールへ突進開始。杉本からのパスを受けた大澤朋也は、「相手DFに引っかからないように」(大澤)と丁寧にクロスを送る。杉本の右足はボールを正確にとらえたが、これは相手GKが弾く。しかし、そのこぼれ球が再び杉本へ戻ってきた。
「1発目は、まずふかさないというところを意識したんですけど、(GKの)正面に行っちゃいました。それが自分に返ってきたので、力まないというか、力を抜こうと。たぶん“ちょん”と触っただけだと思います」
蒸し暑さの中、90分以上を走り回った最終盤。自らの動きを正確に制御することすら困難な中、ボールを左足で正確にミート。サポーターが待ち構えるゴールに流し込んだ。
「あっち(サポーター)側に決めたのは初めてやったんで、良かったですね」
前節のカターレ富山戦では、82分に先制しながら88分に追いつかれ、2ポイントを失った。同じ轍を踏むことは許されなかった。
「PKで同点になって、たぶんそれ(富山戦)がよぎったと思う。だけど、みんな諦めてなかったし、自分も含めてみんなの思いが詰まったゴールだと思う。引き分けで終わるのと勝つのとではだいぶ違う。ここからチームが上向きにいくんじゃないかなと思っています」
勝点3はチームに活力をもたらす。それが劇的な勝利ならなおさらだ。大宮の首位独走に拍車がかかるのは、間違いない。
Reported by 土地将靖