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【取材ノート:福岡】胸に宿るフォア・ザ・チームの精神。ウェリントンが魅せ続ける献身的なハードワーク

2024年6月25日(火)


明治安田J1リーグ第19節の町田戦。強度高く、ロングボールを多用するチーム同士の一戦で1トップに入ったウェリントンが奮闘を見せた。

「町田さんのサッカーはとても徹底していて、守備のところが非常に堅い。そこを開けていくには自分たちの良さを出していかなければいけないですし、チャンスは何度か作れたと思うんですけど、町田さんの堅いところは破れなかったのは一つ課題かなと思います。守備に関しては、相手は自分たちと似たようなロングボールをたくさん使うところで、簡単に蹴らせないとか、簡単に裏を取られないというところは今日できたと思うので、そういうことができたからこそ、失点をせずにこういうアウェイの難しいゲームで勝点を取れた」


持ち前のフィジカルの強さと高さを活かして、攻撃では最前線で体を張って起点を作りながらゴールを狙い、守備ではファーストディフェンダーとして相手のビルドアップを制限しながらプレスバックも行って仲間をサポート。得点こそならなかったが、チームに貢献するハードワークを見せた背番号17に対し、長谷部茂利監督も賛辞を贈る。

「非常に良かったと思います。ほぼ全部のボールを競らなくてはならない。プレスもかけなければいけない。ボールを引き出さなくてはいけない。いろんなプレーが求められるエースと呼ばれるポジションですね。よくやってくれたと思います」

これで今シーズン、リーグ戦の先発は9試合目。直近3試合連続で先発出場中の36歳のウェリントンは、「コンディションも非常に良くて歳は関係ないということはしっかりと示せている」と言うように高いパフォーマンスを維持。その要因について自身では次のように分析している。

「日頃の細かいことで言うと食事のところであったり、練習でしっかりと質を上げて、強度を上げて取り組まなければいけないですし、自分はチームの中では年上の方なのでそういったところはしっかりと自己管理を徹底すればこうやって(高いパフォーマンスを)維持できると思いますし、自分だけではなくてチーム全体として休養だったり、リカバリーのところだったりをしっかりと徹底しているので、そういったところがチームの好調の要因の一つだと思います」

2013年に母国のブラジルからやってきたウェリントン。これまで所属した湘南、福岡、神戸の3チームでリーグ戦では78のゴールを積み重ね、今シーズン第3節の湘南戦で11年連続ゴールを記録。Jリーグで長く活躍を続けている。

「長いこと日本の難しいリーグに居続けられていることも非常に誇りに思いますし、こうやって得点を取ることも誇りにしてもいいのではないかと思っています。外国籍選手として長いこと自国ではないリーグでやるということは非常に難しいですけれど、こうやって日々の努力のおかげで長いことプレーできているということは自信にもなりますし、また、アビスパでの昨年の活躍を見て、こうやってもう1年自分を残してくれたという想いもあります。そして、この(連続)得点(記録)をまた伸ばせたらなという思いもあります。(日本で活躍し続ける上で)一番大事なのはエゴを捨てることだと思います。やはり助っ人として来るということで、どうしても自分はスターだという想いの選手を何人も見てきましたし、移籍してきた選手が成功しない例もたくさん見てきましたが、外国籍選手が助っ人として来るのは何か力があるからこそ呼ばれるわけなので、その力をチームの力に変えること、自分の特長をもって王様になるというわけではなく、チームの一員としてチームの持っている力を最大限に引き出すということが長く日本に残れる秘訣だと思います。もちろん、言語のところだったり、文化だったり、そういったところに合わせることも必要です。自己中心的になるのではなく周りに合わせることは非常に重要なことですし、そういう柔軟性を持った精神が非常に大事なポイントだと思います」

全てはチームの為に。2015年、初めて福岡にやってきた頃は「自分が点を取ってチームを勝たせないと」というエースストライカーとしての責任感が強かった。ただ、今は違う。2023年に福岡に復帰すると、仲間の為に走り、体を張り、そしてゴールにつなげる。例え、自分がゴールを奪えなくても自分のハードワークによってチームが勝てればいい。そんな想いがこれまで以上に強くなっている。だからこそ、ここまでチームトップの6ゴールを挙げている同じポジションのシャハブ ザヘディの活躍も素直に喜び、自分の刺激に変えている。

「チームメイトがこうやって活躍してくれるのは非常に嬉しいことですし、僕ら2人だけではなくて、他のFWもみんな試合に出たいと思っているので、みんなへの良い刺激になると思います。彼は日本が初めてにも拘わらず彼の良さを出していますが、まだ対戦相手が彼のことを分かっていない部分がたくさんある中で、それを上手く活かしているというのは良いことなので、引き続き彼にはたくさん点を取ってもらって、自分自身もそこに対して良い競争をして、お互いに試合に出ることができれば、それはチームにとってもプラスのことしかないので、チームメイトが活躍するのは非常に素晴らしい良いことだと思います。(ザヘディを)真似るというようなことは全くないですね。お互いに全く別のタイプのFWだと思っていますし、パワーは彼より自分があると思っていますが、彼のテクニックは自分より優れていると思っています。誰がどこで出るかは、チームの戦術だったり、状況だったりによってチーム(監督・コーチングスタッフ)が決めることで、選手の役割というのは、どんな使われ方であろうと、与えられた時間でしっかりと結果を残すということだと思っています。彼がすごく良いプレーをしているのはチームにとっても嬉しいことですし、所属している選手にとっても、やはりチームが勝つことが一番なので、そこがずっとできていれば、自分も、チームもみんな喜べると思います」

シーズン前半を終え、8位の福岡が積み上げた勝点は29。そこにはここまで2ゴールという得点数以上のウェリントンの献身的な働きが大きく貢献している。「僕たちが目指すところはもっともっと上にあることは(リーグの)前半戦で示せたのかなと思います。前期のほうで勝ち切れなかった(相手との)試合を後期で勝ち切ること。そして、前期で敗れたチームにはリベンジという思いで勝つことが大事になってくる」。勝負のリーグ後半戦に向け、充実感に満ちた表情でそう言葉を残してミックスゾーンを後にした。

Reported by 武丸善章