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【取材ノート:福岡】今シーズン2度目の連敗。福岡が乗り越えなければいけない課題

2024年5月21日(火)


この日最後にミックスゾーンを通ったキャプテンの奈良竜樹はこう言った。

「こんな試合は1年に1回以上経験したくない。メディアの皆さんも選手たちを奮起させるような記事を書いてください」

明治安田J1リーグ第15節のセレッソ大阪戦は文字通り完敗だった。前半だけで2点を失い、反撃に出ようとした後半には退場者、交代枠を使い切った後に負傷者が出て最後は9人での戦いを強いられ、最終的なスコアは0-3。今シーズン2度目の連敗を喫した。


「立ち上がりはどっちつかずのゲーム展開で、セットプレー2発で(失点して)難しい展開になったと思いますし、後半入るまでに自分たちがああいうゲームにしてしまったことに全ての問題があると思います」

チームの心臓である前寛之の言葉通り、前半の2失点がゲームの流れを決めたと言っていい。その中で筆者が気になったのは「ボール保持の質」だ。1失点目につながったFKはドウグラス グローリの敵陣でのトラップミスから自陣にボールを運ばれ、2失点目につながったCKは相手のクロスボールを田代雅也が思い描いたところにクリアできずにゴールラインを割った。いざ、反撃に出ようとした時にも相手のハイラインでコンパクトな守備ブロックの前にボール保持の局面でのミスやズレが散見。中2日での試合で厳しいフィジカルコンディションであったということを差し引いてもチームとしてプレーの精彩さを欠いていた。

サッカーはミスが起こりやすいスポーツ。どんな選手にもミスはあるし、それを追及したいとは思わない。ただ、この試合に限った話ではなく、「止めて、蹴る」。そこにほんの少しでも質の低さを見せると日本のトップカテゴリーであるJ1のあらゆるチームは見逃してくれない。

シャハブ ザヘディが魅せる規格外のシュート、紺野和也が魅せる巧みなドリブル、岩崎悠人と湯澤聖人の両翼が魅せる力強い縦突破などボール保持の局面で個人個人が魅力あるプレーを見せてくれているのは間違いない。それでも、福岡が目指す「リーグ戦6位以上、カップ戦ベスト4以上」に向けてはチームとしてよりつながりを持ち、意図した形でボールを前進させながら崩しのバリエーションを増やして、ボール保持の質を高めなければいけない。

「一つのやり方ではなくて、方法でなくて、いくつかの人もそうだし、角度もそうだし、下も上もそうだし、そういうところ。いくつかのルートで彼にボールをゴール前でなるべくね。ゴール前で配給したいんですけど、その前の段階でハーフウェイラインを自分たちが越えていくこと。そこがこれまでもこれからも課題だと思うんです。それは、人も代わるし、相手のプレッシャーも来る、来ないもあるんですけど、その状況に応じたプレーをできるようにトレーニングを少しずつ積んでいます」

これは以前、エースストライカーのザヘディへどう効果的にボールを渡すのか考え方を長谷部茂利監督に尋ねた時の答えだが、チーム全体での攻撃の構築へつながる答えでもある。

当然長いシーズン、チームとして上手くいかない時もある。苦しい展開になっても諦めない。くじけない。どんな試合であろうとも終了のホイッスルが鳴るまで懸命にゴールへ向かう姿勢をこの日も福岡の選手たちは見せてくれた。

「毎試合、選手は勝つ為にやっていると思いますし、やる気がないとか勝つ気がないっていうような選手は誰一人(ピッチに)立ってないと思いますし、難しい試合にしたのも全ての選手ですし、ホームでこういう不甲斐ない試合をしたのも自分たちですし、90分(終わる)最後まで巻き返そうという姿勢は全員にあった」と前は言い、松岡大起は「ここはホームですし、やり続けないといけないところですし、自分たちは勝つ為にやっているので、そこは一人ひとりがそういう責任と覚悟をもって戦っていた」と力強い言葉を残した。

これからもチームとしてファイティングスピリットを失わず、自分たちの課題を乗り越えていってほしい。それができないチームではないと福岡に関わる人々は信じている。

Reported by 武丸善章