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【取材ノート:福岡】スーパーゴールをより価値あるものにした1つのシュートストップ。村上昌謙が考えるチーム全員で守ることの大切さ

2024年5月5日(日)


衝撃のゴールが生まれたのは、明治安田J1リーグ第11節ガンバ大阪戦の22分。シャハブ ザヘディがゴールまで約70メートルの位置から迷わず左足を振り抜く。あっ、打った。ぐんぐん伸びていくボールは相手GKの頭を超え、ワンバウンドしてゴールへ。えっ、入った。誰もが想像しえない現実。ベスト電器スタジアムには歓声ととともに大きなどよめきが起こった。

強烈な一撃はそれまでの試合の流れを一変させる。「ずっと攻められたワンサイドゲームだったと思うんですけども、そこでシュートを簡単に打たせない。またそこで耐え忍んだことがチームの良さ。点数をとるまでの間が今日のゲームのポイント」と長谷部茂利監督が言うように最終的に決勝点となったエースのゴールの価値をより高めたのは、ボールを多く保持し、鮮やかなパスワークでゴールを狙う相手に対して無失点で凌いだからこそ。その立役者の一人がGK村上昌謙だ。

象徴するプレーは立ち上がりの3分に起こる。鋭い楔のパスを受けたのは坂本一彩(G大阪)。絶妙なトラップからすぐさま反転すると、奈良竜樹を置き去りにして1対1に。だが、福岡の守護神は冷静な対応でこの試合まで3戦連続ゴールと好調のFWのシュートを的確に止め、ピンチを防いだ。


「先制されるというのはやっぱり2点をとらないといけない状況になりますし、まずは0の時間を長くすること。(試合の)入りのところで自分自身ミスがあって、締めないといけないと考えていて、100%の集中でやっていたんですけど、ミスはあるものなので、そういったところでちゃんと90分通して集中して守れたと思いますし、あの場面、奈良ちゃんが相手に抜かれた後にタッシ-(田代雅也)がカバーに入ってくれていたし、その後のセカンドボールのところでペナルティエリア内にアビスパの選手のほうが多くいたこと。そういったところがあったから止められたというか、ちゃんと準備をしていたから失点しなかったと思います」

試合の勝敗を分けかねないビックセーブ。だが、村上はいつもそんなシーンを見せても大きく誇ることはない。常に彼が大事にしているのはチーム全員で守ること。そのピースの1つに自身がいるという考え方だ。

「(サッカーは)11人がピッチに立って、それプラス、ベンチ含めて18人で試合をしていると思います。お互いに助け合いながらやるのがチームスポーツの素晴らしいところだと思うし、アビスパの守備のところでもあると思うので、失点しないために11人がそれぞれの役割をしっかりとやることが大事」

決して派手さはない。常に泥臭くチーム全員でハードワークし、集中力高く、粘り強く守る。誰かがやられても誰かがカバーする。それが福岡の良さであり、「堅守」と評される守備の堅さの根底にあるものだ。J1に復帰して4シーズン目。毎年これまでの歴史を塗り替え、クラブとしての立ち位置は変わりつつあるが、チームの大事にする「アイデンティティ」が変わることはない。

「全員で戦えているということは感じていますし、それが(試合に)出ている選手だけでなくて途中から入る選手もそうですし、メンバーに絡めなくて悔しい思いでやっている選手全員がそういう雰囲気を練習から出しているからこういう結果につながっていると思うので、(試合に出ている)11人がフォーカスされるというよりチーム全体の意識のところが一番大事だと思っています。一人ひとりの技術もそうですし、メンタルというところもそうですし、そういうのを含めてアビスパというチームがどういうチームであるべきかというのをみんなが考えてやれているというのがいいと思います」

頼もしい仲間と共にもっと強くなりたい。村上は最後にこんな言葉を残した。「アビスパ福岡という(クラブの)価値を高めて、あまりサッカーを知らない方々にも足を運んでもらえるように、今サッカーをやっている子どもたちの目標になれるように頑張っていきたいと思います」。明るく謙虚な性格の背番号31は一体感の強い福岡に欠かせない存在だ。

Reported by 武丸善章