大宮アルディージャの4月の5連戦の締めくくりは、日程がずれていた明治安田J3リーグ第3節、福島ユナイテッドFC戦。攻勢にありながらもなかなか試合を動かせない展開の中、長澤徹監督は70分、3枚替えに打って出る。シュヴィルツォク、中野克哉、そして泉澤仁を投入した。
76分、中野克からショートコーナーを受けると、泉澤は得意のフェイント、ゼロヒャクを軽く見せて対峙する相手DFを外し、精度の高いクロスを送り込んだ。浦上仁騎のヘディングシュートは相手GKに阻まれたが、こぼれ球を市原吏音が押し込み、先制に成功した。
さらに80分。シュヴィルツォクの大きなサイドチェンジを受けた泉澤は、ゴール前へ切り込んでいく。相手DF2人が寄せてきたが、果敢に打ったシュートはディフレクションで軌道を変え、相手GKの頭を越えゴールポストに吸い込まれていった。
「最初は相手の股間を狙ったんですけど、滑ってきたので、(相手に)当たってうまく入ったゴールだったと思います」
今季リーグ初出場ですぐさま2得点に絡む活躍となったが、これには直前の復帰劇に布石があった。4月17日に行なわれたJリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド第2回戦の名古屋グランパス戦だ。泉澤は56分に途中出場で今季公式戦初出場を果たしたが、見せ場なく試合を終えた。全体としてプレーが緩慢な印象で、キレが見られなかった。
「あの試合(名古屋戦)に関しては、完全合流して数日しか経っていなかったので、相手とか自分の状態というよりも、自分の怖さと戦っていたという感じでした。数日前まで全力で走るのもダメ、という状況だったので」
医学的には問題なくとも、実戦で、公式戦でどうプレーできるか、という手応えを、そして再発の恐怖までをも克服するのは難しかったというところか。だが、「その試合をやったおかげで今日(福島戦)は怖さがなくなって、思い切りできました」と、晴れて完全復帰に胸を張った。
今季は準備段階から、例年以上に動けている印象があった。キレのあるプレーを見せ、精力的に練習に取り組んでいた。
「監督が、活かしてくれるやり方をやってくれているので、それにマッチしているのが一番の要因かなと思います」
そんな中での開幕直前でのアクシデントに、ショック、悔しさは相当なものだったはず。それでも愚直に、地道に復帰への道筋をたどってきた。時間はかかったが、最高の形でスタートラインに立つことができた。
「完全合流して1週間経って、本当に競争が始まるかなと思います」
次に目指すのは先発メンバー。そこに入るための争いが、本格的にスタートする。ゼロヒャクで、NACK5スタジアム大宮を沸かせるためにーー。
Reported by 土地将靖