Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:大宮】チームのために。エース杉本健勇に待望の初ゴール

2024年3月28日(木)


誰もが待ち望んでいたゴールだ。

明治安田J3リーグ第6節の大宮アルディージャ対テゲバジャーロ宮崎戦、1-0と幸先よく先制し、迎えた25分だった。

村上陽介がドリブルで持ち上がると、右の中野克哉へパス。右足ダイレクトで上げたクロスを、杉本健勇が頭で叩きつけると、ボールは左ポスト内側に当たりゴールに転がった。杉本の大宮加入後、初めてのゴールにピッチが、そしてスタジアムが歓喜に包まれた。


自身の初ゴールに喜びもひとしおか、と思いきや、試合後は淡々とした様子であった。

「全然関係ないっす(笑)。気にしてないし、別にどっちでもいい。チームが勝てばいい」

むしろ、茂木力也の先制点をアシストできたことを喜んでいた。

「いい形でターンできて、得点より気持ち良かったですね。力也がしっかり決めてくれた。あいつは俺が持ったら常に走っているので、良かったです」

長澤徹監督も「ゴールやアシストは皆さんが評価してくれる」と語り、さらにこう続けた。

「シュートの前に潰れたりとか、1点目みたいに自分も打てるんだけど味方を選んで丁寧にパスを出すとか、チームが勝つためにどちらを選択するかという部分において、僕はそっちを評価する」(長澤監督)

実際、開幕のヴァンラーレ八戸戦では1点目、4点目でクロスに対しニア側で潰れ、ゴールを導いた。第5節SC相模原戦ではゴール前中央でボールを受けると、絶妙なワンタッチパスで藤井一志のプロ初ゴールをお膳立て。宮崎戦での茂木の先制ゴールのアシストを含め、第6節までのチーム総得点11点のうち、半分以上の6得点に絡んでいる。



それだけではない。今季の大宮の試合を見ていて一番目立つのは、杉本の献身的な守備ではないだろうか。最前線からプレッシングの先兵として、とにかくピッチ上を駆けている。そこには、「チームが勝てばいい」という杉本の言葉に含まれた思いが見える。

かつては日本代表にまで昇り詰めた男が選んだJ3クラブでのプレー。今年の始動直後には「自分の中にもいらないプライドだったり邪魔するものがあったんですけど、すべて捨ててきた」と決意を明かした、覚悟の移籍である。目指すものをつかむため、なりふり構ってはいられない。



「チームのためにプレーしている。その結果が今日、ゴールに繋がったんだと思います。俺はチームのためにプレーするだけです」

39分に藤井が奪ったPKを蹴ったのも、チームでPKキッカーは杉本と決められていたから。しっかりと決めて宮崎を突き放した。

ハットトリックの期待も懸かったが、この調子ならそのうちに決めてくれるだろう。フォア・ザ・チームで戦い続けるエースのプレーから、今後も目が離せない。

Reported by 土地将靖