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【取材ノート:福岡】魔法の左足。福岡の攻撃を牽引する紺野和也の新たなる挑戦

2024年3月11日(月)


試合後、ミックスゾーンに現れた紺野和也は悔しさを滲ませながらいの一番にこう言った。

「僕のところで1対1のチャンスもあったので、あれをしっかり決め切っていれば勝てた試合だったと思います」

それは、明治安田J1リーグ第3節の湘南戦、1-1で迎えた44分に相手のパスミスを見逃さず、広大に広がった最終ラインの裏のスペースにドリブルで抜け出してGKと1対1になった場面だ。


「最初、ループ(シュート)を打とうと思いましたし、相手の(GKの)股も空いてましたし、結構右下も空いてるなと思ったし、ドリブルで抜いてからでもいいかなとかいろいろアイデア出すぎて逆に良くなかったです」

最終的に選択したシュートコースは右下。だが、相手GKの好セーブに遭い、勝ち越し点は奪えず。そのまま1-1のドローに終わった。

「相手よりもシュート数、また枠内も多かったようです。自分たちが取り組んでいることが少しトライしてできた場面と、得点は1得点しかしていないので、できていないことも多かったと思うんですけども、方向性が間違ってないことを確認できたし、また改めて課題も浮き彫りになったし、というところです。シュートを入れる、ゴールを取るというところが、今日は先ほど言ったように浮き彫りになった」と長谷部茂利監督が話すようにこの日福岡が放ったシュートは15本。その内、枠内シュートは9本(©JSTATS)。カウンターやロングボールに頼るだけでなく、チームとしてボール保持の質を上げ、崩しのバリエーションを増やして得点力アップにチャレンジするチームの方向性を示す中で精度の低さという課題は鮮明に浮かび上がった。

ただ、全てが上手くいかなかったわけではない。例えば、幸先よく6分に奪った先制点のシーン。紺野の左足から放たれた高精度のクロスをウェリントンが足で合わせた。「自分自身もそうですけど、周りの選手も活きる形になると思うので、そこはチームとしてどんどん狙っていくべきポイントの一つ」とウェリントンが言うようにクロスが少なかった第1節の札幌戦から第2節の横浜FM戦、そして今節とクロスの数を増やす修正を施し、ゴールに迫る回数は増えた。

「狙い通りですね。ウェリ(ントン)が中にいるのは相手は怖いと思いますし、あそこのセンターから若干ファーのところというのは相手のキーパーも出ずらいところだと思うので、良いボールを上げれたんじゃないかと思います。今はウェリが出ているのでウェリが出ている時間帯というのは相手からしてもクロスが怖いと思うので、より意識しながらクロスを多くしようというふうには話をしています」

小刻みなボールタッチで見る人を魅了する巧みなドリブル、高精度の左足のキック。ボールを持つと何かやってくれそうな雰囲気をいつも出す紺野。輝きを放った昨シーズンの終盤までと同じ3-4-2-1のシステムの右シャドーに入る福岡加入2年目のレフティーにとって今シーズンは変わった面がある。それは、ここ3節でトップと左シャドーに入る選手が変わっていることだ。ストロングヘッダーという異名をとる高さと強さが持ち味のウェリントン。スピードを武器に90分通して前への推進力を見せ続ける岩崎悠人。これまでとは違ったタイプの選手とスタートからトリデンテを組む中で、紺野は自身がゴールを奪い、チームとしてゴールを生み出すために試行錯誤を繰り返している。

「二人とも強い長所があると思うので、そこをやっぱり活かした攻撃をすべきだと思いますし、ウェリがいるときはクロスだったり、(岩崎)悠人だったらスペースにパスを出してあげて走らせるというのも有効だと思うので、そこは相手を見ながら味方の長所を活かしながら攻撃できればと思います。段々と試合を重ねるごとに良くなってきていると思うんですけど、でもまだまだなところも多いので、そこを一緒にする時間を増やしたりだとか、あとはもっと合わせれるところもあると思うので、そこは練習からもっと合わせて試合で出していきたいと思います」

第2節の横浜FM戦では今シーズン自身にとって、そしてチームにとっても初となるゴールを挙げ、今節ではアシストでチームに貢献した紺野。現在、コンディション不良で戦列を離れている期待の新ストライカーナッシム ベンカリファや湘南戦の前にサポーターに挨拶をしたイラン代表の経験もある新加入FWシャハブ ザヘディが今後前線に入ってより攻撃陣に厚みが増す中で、チャンスと見るやゴールを奪い、チャンスメイク能力にも長ける紺野の活躍は福岡が課題とする得点力アップに必要不可欠だ。周りを活かしながら自分も活きる。その才に優れたのが福岡の攻撃を司る背番号8。新たなチャレンジに挑む姿に注目だ。

Reported by 武丸善章