開幕戦まで1週間を切った。新たなシーズンに向けて高まる鼓動、期待感。それは、2月18日に監督・選手が参加し、昨年を上回る約750人のサポーターと結束を高めたイベント「2024アビスパ福岡キックオフフェスタ」の会場内の盛り上がりに表れていた。
振り返れば、2023年は福岡にとって歴史を塗り替え続けたシーズンだった。J1でのリーグ戦で過去最高となる7位。天皇杯ではクラブ史上初のベスト4。そして、初のタイトル獲得となるJリーグYBCルヴァンカップ優勝。目標に設定した「リーグ戦8位以上、カップ戦ベスト4以上」を全てクリアし、福岡に関わる人々がこれまで目にしたことのない景色を見せてくれた。
そんな充実のシーズンを経て迎える2024年、福岡のエースとしてJ1で2年連続二桁ゴールを挙げた山岸祐也、強靭なフィジカルとスピードを活かして攻守に貢献したルキアン、中盤でハイレベルなプレーを見せ続けた元日本代表の井手口陽介らが移籍。チームの要所を担っていた選手が退団したが、「今シーズンの目標を達成することと、それから将来の目標の達成につながる編成をしています」と柳田伸明強化部長が話すように広島からストライカーのナッシム ベンカリファ、鳥栖から25歳の快速FW岩崎悠人、清水からボランチの松岡大起、福岡大学から同じポジションの重見柾斗、GK菅沼一晃の22歳の3人が加わり、23歳の北島祐二は東京Vへの期限付き移籍から復帰。チームの若返りを図る一方、これまで築き上げてきたチームスタイルにフィットする実力者を獲得し、戦力ダウンを感じさせないピンポイントな補強を行った。
今シーズンの目標は「リーグ戦6位以上、カップ戦ベスト4以上」。特定の個の力に依存することなく、選手それぞれの特長を伸ばしながら基本に忠実に組織化させたチームでどんな強豪相手にも堂々と渡り合ってきたのが福岡。昨シーズンの成績を超えるべく、どのように戦力と戦術を組み合わせ、攻守に上積みを図るのか。長谷部茂利監督は次のように考えている。
「我々は守備のところで高い能力を発揮して、組織力を発揮して失点を少なくしています。その部分が昨年は少し乱れたところがありました。失点数がリーグの中で中位になってしまった。それはあってはならないという話をしました。そして攻撃のところでは得点が少し増えましたが、得点をすることで、先ほど伝えました6位以上という目標に近づく。これは絶対に必要なことだよという話をしました。なので、攻撃のところは得点に結びつくようなプレーの質を高めること、その回数を増やすことを選手たちに伝えています。まず自分たちのスタイルというのは大きく変えることはありません。アグレッシブなスタイル、攻守に渡って『前から』『前へ』いうことは選手たちに意識してプレーしてもらいます」
前線からのプレスと強固なブロックを上手く使い分け、チーム全体でコンパクトに連動性をもって機能させる守備。カウンターだけでなく、昨シーズンの終盤に少しずつ表現できるようになってきた効果的なビルドアップと崩しに新たなバリエーションを加えながらゴールを奪う確率を上げる攻撃。今シーズン新たに加わった塚原真也コーチも交え、チーム全体で攻守に磨きをかけながらレベルアップを図っている。
複数得点、無失点で勝つ。これは長谷部監督が理想とする勝ち方だ。福岡の更なる躍進には、昨シーズン、リーグで4番目の少なさに終わった得点数の向上が欠かせない。当然ながら攻撃面に多くの視線は集まる。だが、サッカーは攻守一体のスポーツ。ゴールを増やすだけでは勝てない。だからこそ、自分たちが大切する前向きにボールを奪いにいき、ピンチの場面では体を張って粘り強く守る守備面の安定が必要不可欠だ。良い守備からの良い攻撃。確固たるスタイルを大事にしながら「ゴールを取るというのはまさに質」と長谷部監督が言うように選手のキャラクターが変わった中で、攻守にどんな化学変化を起こし、チームとしてどれだけ質を高められるかに注目していきたい。
そんな今シーズン、クラブは「JUMP」というテーマを掲げた。川森敬史代表取締役会長はその理由をこう話す。
「私どもアビスパ福岡はロードマップを公開させていただいております。まずは『J1定着』ということで、みなさまのご支援、ご声援を得て、現在J1に定着をしております。その中で、定着を前提にロードマップで言いますとステップ2、こちらに歩みを進め、J1中位を目指して私どものアベレージを上げていく、それをスタートする年にしたいというふうに考えております。みなさまとともに更に高みを目指して戦ってまいりたいというところでございます。この『JUMP』に関しましては、挑む気持ちを一言で表現し、今シーズンのスタジアムでイベント、また私どもが発信することに触れて、キーワード、テーマを用いてというふうに考えております。チームも事業も成長し続ける強い気持ちを持って臨むシーズンとしたいと考えております」
チームとして、クラブとして「第2章」となる新たなステージへと向かう今シーズンの福岡。そんなシーズンを迎えるにあたって最後に昨年の11月4日、国立競技場で福岡の歴史を変えた直後にクラブのバンディエラである城後寿が残した言葉を記しておきたい。
「これで弱いアビスパともさよならです。ここから求められるものも多くなると思いますけど、またみんなで強くなっていきましょう」
福岡が一丸となって新たな道を切り拓いていく2024シーズンがまもなく始まる。
Reported by 武丸善章