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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:よりアグレッシブな技巧派センターバックへ。河面旺成は静かに、しかし誰よりも燃える。

2024年2月7日(水)


まさしく積み上げた信頼が引き出した、指揮官の一言だった。

「コンディションがここから上がってくれば、第1候補になるかなと思っています」

2月6日に計20日間のプレシーズンキャンプを終えた名古屋グランパスは、最終日に行われた札幌との練習試合に変則的ながら4本合計6-1の快勝を収め、今季のチームの土台を固めた。中でも3名の実力派を迎え入れたDFラインの再構築は大きなテーマであり課題だったのだが、キャンプを通じて安定したパフォーマンスを見せてきた河面旺成は札幌戦でも攻守に安定感を見せ、前述の指揮官からの“太鼓判”をもらったわけだ。「今年は本当にDFラインの選手が多く変わった中で、去年ある程度の試合に出た自分が中心にやっていかないといけない」。本人もそう意気込んでいる中での評価だっただけに、説得力は増す。

今季の名古屋が取り組んでいる新たな戦い方の中でも、河面には少なくないアドバンテージがある。左足のキック精度とビルドアップなどのパスセンスが武器のセンターバックは、可変システムを駆使する今季の戦術において貴重な存在だ。新加入のハ チャンレ、三國 ケネディエブス、井上詩音は基本はファイター型の選手であり、河面にはビルドアップの面で一日の長がある。沖縄でのキャンプでもDFラインはいくつかの組み合わせが試されてきたが、こと後方からのつなぎにおいて河面の入ったセットの見せるクオリティは抜群のものがあった。一発でDFラインの背後を狙うパスが出せる上に、攻撃を前進させる気の利いたショートパスも巧み。左利きならではの視界でノールック気味に送る鋭角なパスも洒落っ気があり、ビルドアップに彩りを添える。



長谷川監督が求めるインテンシティの高さや、激しいコンタクトプレーにも昨季1年で順応し、「前には信頼できる選手がたくさんいるので、後ろがどれだけ安定できるかというところで、一つひとつのプレスの感覚は大事にしていきたい」と、今季も意識は高まるところ。事実、キャンプでのプレーも激しさと危機察知能力の高さを感じさせるところが強く、研ぎ澄まされた守りを見せていた。「今は迷いなく行けていると思いますね」と穏やかに語る29歳は、移籍3年目の決意とともに、覚悟を口にする。

「このチームでは後ろがマンツーマンで守る瞬間も全然あります。相手にスピードのある選手や強い選手だったりも、J1には特に多い。そういう中でやっていくためには強いアプローチや激しいコンタクトが求められるし、求められないとしても、自分の中では必要な部分かなと思っています」

長谷川監督も練習試合中のワンプレーを引き合いに、「1対1で抜かれちゃうとな、という部分もあるが、コンディションがまだ負傷明け、今日はケガ明け2戦目なので」と“情状酌量”の余地を認めた。ややミスが散見された選手には「粗削りなので、様子を見ながら」と話す中でのこの表現は、やはり昨季のプレーで信頼を得ていることを感じさせる。そもそも、昨季終盤の負傷にしても、アグレッシブにFWへとアプローチしていった結果の事故的なものだった。しっかり守れて、ビルドアップの貢献度も高い。そう認められているからこその「第1候補」発言である。



今季は追い風として、沖縄キャンプに中澤佑二さんが訪問し、ヘディングのスキルとラインコントロールを名古屋守備陣に伝授するという出来事もあった。クロス対応を含めたヘディングの技術指導と、最終ライン統率の考え方にはセンターバック陣全員に刺激を与え、心なしか河面の動きもヘディングの威力も変わった気がする。セットプレーでも良い位置に入っていることが増え、それはもともとの仕事ではあったものの、意欲がその動きに迫力を備えているように見えて仕方ない。要するに今季の河面は、スケールアップしているのだ。

年齢的にもDFとして脂がのってくる頃である。多くの新加入選手が注目を浴びる今季の名古屋の陣容だが、だからこそ既存メンバーが軸となって動かす必要もある。3バック左のポジション争いはまだまだ熾烈だが、背番号24の有用性もまた揺るがない。「去年からの継続も含めて、今年の自分は試合に出ていなければいけない」。強くて上手い3バックの要として、河面は名古屋でのキャリアハイのパフォーマンスを目指す。

Reported by 今井雄一朗