12月18日(月)、藤枝の10番・横山暁之がジェフユナイテッド千葉へ完全移籍することが発表された。
J2初挑戦ながらリーグ屈指のトップ下として他チームに強い印象を与えた今季のパフォーマンスからすれば、引き抜きオファーが来ることは当然予想されていた。ただ、J1ではなくライバルとなるJ2のクラブへの移籍ということで、本人としてもかなり迷いはあったようだ。とくに藤枝に対する熱い想いは、移籍発表時の本人のコメントによく表われている。
だから、対戦相手としては非常にやっかいな選手になることを承知しつつ、彼の巣立ちを温かく見守っている藤枝サポーターは多いことだろう。プレースタイル的に藤枝と共通する面があり、J1に昇格する力も備えたオリジナル10のクラブは、彼がさらに成長していくためにふさわしい新天地となるはずだ。
そう断言できるのは、これまでの歩みも苦難の連続だった中で、横山は自力で力強く這い上がってきたからだ。
東京Vユース時代は、技術の高さは認められながらもフィジカル的な課題もあって主力となりきれず、北陸大学に進学。大学ではすぐに主軸となったが、4年時に左膝半月板を損傷して長期療養を強いられ、プロからのオファーはつかめなかった。それでも夢をあきらめずに無所属で1年間トレーニングを積み、練習参加で力を示して2020年に藤枝への加入をつかみ取った。
だが、藤枝でも初めの1年半は不遇の時期を過ごした。彼自身も自らの特徴を表現しきれず、逆に守備面の課題等が目立ってしまっていた。2年目(2021年)の前半には、練習試合で前半のうちに交代させられてしまうという屈辱も味わった。
だが、それでもあきらめず地道に下積みを重ねてきた同年7月、須藤大輔監督が就任してから彼の境遇は一変する。ボールを保持しながら超攻撃的に戦うことを目指す須藤監督のサッカーに横山のテクニックは誰よりもハマり、新体制初戦でプロ初出場・初先発をつかんだ。
「須藤さんは、僕らの足りないところよりも強みの部分を見てくれました」という指揮官の下、彼はその強みを存分に発揮して攻撃を牽引し、試合経験を重ねながら足りない部分も自主的に補っていった。2022年はパーソナルトレーナーをつけるなどしてケガの多さやフィジカル面の課題を克服。ゴールに向かう姿勢も強化して13ゴール/8アシストを記録し、チームのJ2初昇格とベストイレブン入りをつかんだ。
そして今季は初めて10番を背負い、年間を通してチームの軸となって6ゴール/8アシスト(リーグ5位)。その数字に関しては本人も納得していないが、自分の力がJ2だけでなくJ1でも通用するという手応えをつかむことができた。
「結果は思っていたより出なかったんすけど、J2のスピード感の中で自分の特徴を出せているシーンがたくさんありましたし、スルーパス、ドリブル、シュートとかゴールに向かう姿勢やプレーの部分は、継続して少しずつレベルアップできていると思います」(横山)
だからこそ、今夏J1に羽ばたいた渡邉りょう(C大阪)や久保藤次郎(名古屋)に続けなかったことに悔しさもあり、「何か変えなきゃいけない」という気持ちが強くなったと言う。
もちろん、そのまま藤枝でプレーし続けても成長できることはわかっているが、現状維持よりもあえて茨の道を選択するのが、どん底から這い上がってきた男の真骨頂でもある。それは、何度失敗しても果敢にチャレンジし続けていく彼のプレーとも一致する。
「僕が今後サッカー選手として本当に欲しいものを手に入れるために、手放さないといけないものもあるのです」と移籍発表時のコメントでも語っている。
その「本当に欲しいもの」とは、J1がゴールではない。
「サッカーをやっている以上、日本代表に入りたいとつねに思っていますし、次のワールドカップに出たいと本気で思っています」と大きな野心を抱き続けている。
「(千葉では)今ほど試合に出られなくなることも起こり得ると思っています。でも、それは望むところというか、新しい環境でまた1からという方が、よりチャレンジャーでいられるのかなと思っています」(横山)
もっともっと上を目指したいという野心のために、悩みながらも大きな決断をした攻撃サッカーの中核選手。その上昇志向が、プレーの面だけでなく精神面でも千葉に好影響を与えることを、1人の横山ファンとしては期待したい。
Reported by 前島芳雄
J2初挑戦ながらリーグ屈指のトップ下として他チームに強い印象を与えた今季のパフォーマンスからすれば、引き抜きオファーが来ることは当然予想されていた。ただ、J1ではなくライバルとなるJ2のクラブへの移籍ということで、本人としてもかなり迷いはあったようだ。とくに藤枝に対する熱い想いは、移籍発表時の本人のコメントによく表われている。
だから、対戦相手としては非常にやっかいな選手になることを承知しつつ、彼の巣立ちを温かく見守っている藤枝サポーターは多いことだろう。プレースタイル的に藤枝と共通する面があり、J1に昇格する力も備えたオリジナル10のクラブは、彼がさらに成長していくためにふさわしい新天地となるはずだ。
そう断言できるのは、これまでの歩みも苦難の連続だった中で、横山は自力で力強く這い上がってきたからだ。
東京Vユース時代は、技術の高さは認められながらもフィジカル的な課題もあって主力となりきれず、北陸大学に進学。大学ではすぐに主軸となったが、4年時に左膝半月板を損傷して長期療養を強いられ、プロからのオファーはつかめなかった。それでも夢をあきらめずに無所属で1年間トレーニングを積み、練習参加で力を示して2020年に藤枝への加入をつかみ取った。
だが、藤枝でも初めの1年半は不遇の時期を過ごした。彼自身も自らの特徴を表現しきれず、逆に守備面の課題等が目立ってしまっていた。2年目(2021年)の前半には、練習試合で前半のうちに交代させられてしまうという屈辱も味わった。
だが、それでもあきらめず地道に下積みを重ねてきた同年7月、須藤大輔監督が就任してから彼の境遇は一変する。ボールを保持しながら超攻撃的に戦うことを目指す須藤監督のサッカーに横山のテクニックは誰よりもハマり、新体制初戦でプロ初出場・初先発をつかんだ。
「須藤さんは、僕らの足りないところよりも強みの部分を見てくれました」という指揮官の下、彼はその強みを存分に発揮して攻撃を牽引し、試合経験を重ねながら足りない部分も自主的に補っていった。2022年はパーソナルトレーナーをつけるなどしてケガの多さやフィジカル面の課題を克服。ゴールに向かう姿勢も強化して13ゴール/8アシストを記録し、チームのJ2初昇格とベストイレブン入りをつかんだ。
そして今季は初めて10番を背負い、年間を通してチームの軸となって6ゴール/8アシスト(リーグ5位)。その数字に関しては本人も納得していないが、自分の力がJ2だけでなくJ1でも通用するという手応えをつかむことができた。
「結果は思っていたより出なかったんすけど、J2のスピード感の中で自分の特徴を出せているシーンがたくさんありましたし、スルーパス、ドリブル、シュートとかゴールに向かう姿勢やプレーの部分は、継続して少しずつレベルアップできていると思います」(横山)
だからこそ、今夏J1に羽ばたいた渡邉りょう(C大阪)や久保藤次郎(名古屋)に続けなかったことに悔しさもあり、「何か変えなきゃいけない」という気持ちが強くなったと言う。
もちろん、そのまま藤枝でプレーし続けても成長できることはわかっているが、現状維持よりもあえて茨の道を選択するのが、どん底から這い上がってきた男の真骨頂でもある。それは、何度失敗しても果敢にチャレンジし続けていく彼のプレーとも一致する。
「僕が今後サッカー選手として本当に欲しいものを手に入れるために、手放さないといけないものもあるのです」と移籍発表時のコメントでも語っている。
その「本当に欲しいもの」とは、J1がゴールではない。
「サッカーをやっている以上、日本代表に入りたいとつねに思っていますし、次のワールドカップに出たいと本気で思っています」と大きな野心を抱き続けている。
「(千葉では)今ほど試合に出られなくなることも起こり得ると思っています。でも、それは望むところというか、新しい環境でまた1からという方が、よりチャレンジャーでいられるのかなと思っています」(横山)
もっともっと上を目指したいという野心のために、悩みながらも大きな決断をした攻撃サッカーの中核選手。その上昇志向が、プレーの面だけでなく精神面でも千葉に好影響を与えることを、1人の横山ファンとしては期待したい。
Reported by 前島芳雄