契約満了により8年間琉球でプレーしたGK積田景介がチームを離れることになった。
市立船橋高時代にインターハイと選手権で日本一を経験した彼は、駒沢大を経て2016年に琉球へ加入。2年目の明治安田生命J3リーグ第3節・福島戦(●0-1)において試合中負傷したGK今野太祐からバトンを受け、焦がれるピッチに立った。この年は今野に加え、朴一圭(現・鳥栖)も負傷と、プレッシャーを一人背負って戦った積田だが、第4節のG大23戦(◯3-0)で自身プロ初勝利をあげると、第7節では久保建英(レアル ソシエダ)や今年チームメイトとなった柳貴博を擁するF東23(◯3-0)を相手にクリーンシートで勝利し貢献した。
しかし1試合で一人しか選ばれることのないその先発の座は朴一圭、そして元コスタリカ代表のダニー カルバハルや田口潤人らと常に一つの椅子を奪い合うという厳しい環境。「スタンドからチームを見なければいけない悔しさをどこにぶつければいいのかわからない部分もあった」と、歯がゆい日々を過ごしていた。それでも目を背けず「自分が上手くなって強くなれば、チームも強くなる」と堅固な信念を身につけた積田は打ち克つ心を崩さず、そしてチームのために何ができるかという自己犠牲の心を常に持ってひたむきに走り続けてきた。チームの選手会長になったのも彼の信頼感が所以であり、より良い環境を求めるべく先頭に立ってクラブと対話を重ねる協調性も発揮させていた。
2018シーズンの最終節・富山戦(●1-2)以来、実に5年ぶりの出場となった第37節の岐阜戦(●0-1)。「今日のゲームとは別に、できれば積田も」と、彼が琉球に加入した当時の指揮官でもある金鍾成監督の思いを背負って、わずか5分ほどではあったがホームのピッチに立った積田は、「みんなこんな中でサッカーをやっていたなんて本当に羨ましいなって。プロサッカー選手として(相手サポーターから)ブーイングを受けながらプレーできて、こんな贅沢なことはない」と、心に大きな火がついたと話す。そして試合後には、琉球在籍期間で唯一の先輩である富所悠に「お疲れ」と声をかけられハグした瞬間、我慢強い男の涙腺は崩壊し、頬をぬらした。愛情と敬意が入り混じったこの一戦を経て彼は12月、その檜舞台への返り咲きを目指してトライアウトを受ける予定である。万難を排し、最後尾で声を轟かせてチームの背中を押す姿を見せてほしい。
Reported by 仲本兼進