明治安田生命J3リーグ第36節 鳥取戦の25分。浮き球に反応したMF中野克哉はミドルレンジから左足ダイレクトボレーでネットを揺さぶり、今季リーグ戦7ゴール目を決めた。
「(攻撃の選手として)求められているところは明確。ジョンソンさん(金鍾成監督)からも『もっと前でアクションを増やしてほしい』と言われている。チームとしてやるべきことと、自分に求められているプレーがもっとハマればチームの得点も増えてくると思います」(中野)。
彼は第35節 鹿児島戦でも逆足クロスでアシストを決めていて、ここ2試合連続でゴールに絡んでいる。しかしこの結果を生んだ一方で、彼はこれまで自分の形を模索する日々を過ごしていたという。9月から金鍾成監督となって、システムが【4-4-2】から【3-5-2】に変更。右サイドハーフが定位置だった中野も今は左のインサイドハーフに立っている。サイドだけでなく中央寄りのプレーも求められるのはもちろん、1アンカーのシステムゆえに中盤の守備を高めるため広範囲に前線からプレスを仕掛け、守備の強度と戻る距離、ハードワークの部分も追求されていて、攻撃と守備のバランスが難しいポジションである。
「良い形でボールがもらえていないというのは感じていて、ポジションも変わってどこでどうやって自分のプレーを示して価値を出していくのか、特長を出すのか。模索しながら試合をしているのは確かですし、だからこそ存在感を示せていないなという事実は自分でもわかっています」
ポジション変更で自分の役割が変わって、これまでとは違うプレーを求められているのは確か。そういう暗中模索の日々も、いつしか転機が訪れる。
「やっぱりボールに触れないと必然的に良いプレーはできない。だから受け身にならず、パスの出どころを予測して裏へランニングしたりとオフ・ザ・ボールの動きでもっとボールに絡む回数を増やそうと。守備も大事だけど、攻撃でより多くボールに触れて、前でプレーする。シンプルに、そこにフォーカスしてプレーをしたことで結果がついてきて、自然と心に余裕も生まれてきているかなと思います」(中野)
そして「システムが変わってもサッカーはサッカー。変えたことを言い訳にしてやれないことなのか」という金鍾成監督の言葉を飲み込んで「難しさを覚えながらプレーしているけれど、自分の可能性を広げられる良い機会」と、中野はいま成長を実感。ここ2試合ゴールに絡み、紛うことなき存在をアピールしている。
「与えられたポジションは、直接チームの勝利に関われる場所。もっと良さを出して、決定的なことができれば必然的にチームの勝利につながると思っています」(中野)
ぶち当たる壁を乗り越えようとする姿に、仲間たちも彼にパスを送りたいという気持ちにさせる。厚い信頼を受けてボールを受け取ったときの彼の一挙一動に今後も観客は沸き立つに違いない。いまゴールを顕す彼の成長した証である。
Reported by 仲本兼進