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【取材ノート:清水】「凡事徹底」で自動昇格をつかむ。運命の最終戦に向けてチーム一丸でやるべきこと

2023年11月9日(木)
1年でのJ1復帰を唯一最大の目標として今季を戦ってきた清水エスパルス。次の最終節に勝利すれば、自力で自動昇格が決まるという状況までようやくこぎつけた。その運命の水戸戦に勝つために何をするべきか。秋葉忠宏監督や選手たちが考えていることは、気迫や執念という面だけではない。

前々節で熊本に今季初の逆転負けを喫した清水は、磐田と東京Vの直接対決が引き分けで終わったことに救われ、わずか勝点1で2位の座を守ることができた。そこから前節・大宮戦に向けて秋葉忠宏監督が強調したのは、「凡事徹底」というキーワードだった。
その意味は、特別なことではなく、なんでもない当たり前のことを徹底して行なうことといったニュアンスだが、それが熊本戦ではできていなかったと指揮官は振り返る。

「3失点ともボールを奪われてそのまますぐシュートまで持っていかれていました。1失点目もそこからCKになってやられた。フットボールは必ずミスが起こるスポーツですが、そのミスが出た後に2つ3つとフィルターがかかればいいんですけど、1つも粘りがなかった3失点。ジュビロ戦ではそんなこと絶対なかったですが、ホームで先制したら負けないとか、熊本は逆転勝ちが一度もないとか、いろいろある中で緩みが出てしまうのが人間の弱さというか……もしかしたら僕自身もそうなのかもしれないですが」(秋葉監督)

まさに凡事徹底を欠いたことによる失点であり、逆転負けだった。そこは現在のチームだけでなく、清水がずっと抱えている弱点だと秋葉監督は考えている。

「継続する力というのが、うちの選手やチームには足りないと僕は思っています。当たり前のこと、やらなきゃいけないことをコツコツとやり続けるという部分が弱い。これだけのお金と戦力と施設・環境が整っていて(J1から)落ちてしまうのは、やり続けるメンタル的な強さとかタフさがないからだと僕は思っています。だからこそ、そこを克服しないといけないし、凡事徹底をやり続けていくことがレベルを上げるのに一番の近道だと思っています」

その一環として先週から始めた試みが、選手やスタッフ総出でクラブハウスを掃除すること。「もちろん掃除をやったら勝てるなんて思ってないですけど、自分たちが使ってるクラブハウスを自分たちできれいにするのは当たり前のことですし、人間力を磨くことも大事だと思うので」と秋葉監督は意図を語る。
そして前節では、J2残留に向けて決死の戦いを仕掛けてきた大宮に対して、90分間緩みを見せることなく4-0で完勝。そうした凡事徹底を継続することが、水戸戦に勝利するためにもっとも重要だと考えている。

「今さら奇抜なことをするつもりは全くないですし、今やっていることの精度を少しでも上げていくこと、より完成度を高めていくことが来年以降に繋がってると思ってます。それも凡事徹底ですし、その意識を1ヶ月で忘れてしまったら成長はない。半年、1年、もっと言えば現役が終わるまで……カズさん(三浦知良)はそれを何十年もやってるわけですよね。誰でも好きなことはやりますけど、苦しいこと、走ること、相手よりも早く寄せるといったことを気を抜かずにやり続けるのは簡単ではないし、それがうちの選手にはすごく大事になると思っています」(秋葉監督)

もちろん選手たちにも未来を見据えた指揮官のメッセージは伝わっている。

「試合の中で自分たちがやるべきことを一つ一つきちんとやっていければ、必ず勝てる力はあると思うので、最終節もその繰り返しだと思います。ちょっとした細かい部分でもサボらないとか抜かないという部分は、練習で抜いてたら試合で抜けてしまうし、練習でやれていたら試合でもやれる。だからこそ1日1日の練習や日常を大事にしたいと思っています」(山原怜音)

昇格を賭けた大一番を制するためにもっとも重要なことは、来季J1の舞台でのし上がっていくためにも必須の大前提となる。

Reported by 前島芳雄