「まずはトレーナー、フィジカルコーチ、スタッフの皆さん…。YS(横浜)、群馬、愛媛、長野のサポーターの皆さんと、このチームの仲間たちに感謝したい」。ケガから復帰したストライカーは、開口一番にそう話した。
AC長野パルセイロは明治安田生命J3リーグ第34節・カマタマーレ讃岐戦で3-2と辛勝。2点差をひっくり返す大逆転劇となった。終盤には負傷離脱していた進昂平が、途中出場で14試合ぶりのピッチへ。久々の連勝もそうだが、ケガに苦しんだ彼の復帰は好材料だった。
「正直、どん底に落ちた。このチームを優勝させたい気持ちで入ったし、ケガをするまでそれしか考えないでプレーしていた。ケガの期間で優勝もなくなって、監督も交代してしまった。本当に責任を感じている」
Y.S.C.C.横浜時代の恩師・シュタルフ悠紀前監督と再会した今季。開幕から9試合で4得点と好スタートを切ったが、第10節・松本山雅FC戦で競り合いから腰を強打し、負傷交代を余儀なくされる。約1カ月のリハビリを経て復帰したものの、一難去ってまた一難。第20節・相模原戦で芝生に足を取られ、左膝内側側副靭帯損傷および左膝後十字靭帯損傷と診断された。
「スライディングをする前に『バキッ』と音が鳴っていた。ただ、ボールが来ているので飛び込もうと思ったら、もう一個いってしまった」。そうケガの瞬間を思い返す。チームは10試合ぶりに勝利したものの、そこから波に乗れず。シュタルフ前監督は成績不振によって解任となった。
エースを欠いた影響は少なくない。彼が出場した試合は8勝5分4敗。一方、彼が不在の試合は4勝3分10敗だ。いずれも同じ試合数だが、これだけの差が開いている。
秀でた能力があるわけではない。それでもファーストディフェンダーとして労を惜しまず、172cmと小柄ながらポストプレーをこなす。ストライカーらしく、ゴール前での嗅覚も備えている。そして何より、周囲への発言をはばからない。復帰後も味方に厳しく要求するなど、チームを好転させようと励んでいる。
「ケガの種類としても復帰はできるけど、痛みは絶対に残る。まだ完全に膝が曲がらないし、今季はもう痛みが取れることはないと思う。ただ、それ以外のところはパワーアップしている。それくらい自分は努力したと言える」
娘の看病に専念していた砂森和也に加え、頼もしいFWが帰ってきた。残り4試合に向けて「消化試合と言われるかもしれないが、責任とプライドを持って戦いたい」と前に“進”むことを誓った。
Reported by 田中紘夢