「引退する年でレギュラーとして試合に出ている駿太くんは本当にすごいと思います」
そう答えた琉球の富所悠は、盟友との再会を心待ちにしている。
11月4日の明治安田J3・第34節。琉球はホームに富山を迎え入れるが、相手FWにはかつて琉球のエースとして記憶と記録を残してきた高橋駿太がいる。彼は11年に栃木ウーヴァFC(現在の栃木シティフットボールクラブ)から琉球へ完全移籍。この年、JFLを主戦場に我那覇和樹(ジェイリースFC)とツートップを確立した。その翌年、長野から富所が琉球に加入。「一緒にボールを蹴った瞬間から感覚が合うなと思った」と、すぐに見つけた2歳上の相棒に富所はシンパシーを感じ取ったという。
続けて「動き出しが上手い。足が早い。シュートが上手い」の三拍子だったと追憶。「ボールを出せる幅が広く、顔を上げて出しどころを探る前から駿太くんはもう動きだしている。点を取るために逆算ができる生粋のFWだなと思います」。二人のコンビプレーは言葉で伝え合わなくとも互いの立ち位置から最高のコースを目配せ、阿吽の呼吸で理解し合っていた。
そう話す富所が彼とのプレーで記憶に残っている試合に、12年のJFL最終節・MIOびわこ滋賀(現在のレイラック滋賀)戦をあげた。
「駿太くんが最後の試合で点を取ったら(YS横浜の辻正男とともに20得点で)得点王になるチャンスだった。俺どうしても彼にパス出したくて。それでアシストしてゴールを決めてくれたこと。その瞬間が一番うれしかったですね」
クラブ史上初となる得点王という記録を残した高橋は翌年10番を背負って13ゴールをマーク。琉球で過ごした3シーズン47ゴール(JFL)を置き土産にその後長野へ移籍。群馬を経て19年から富山でプレーしている。今季はこれまで先発17試合を含む32試合に出場。現在チーム2位の7ゴールを決めているなか今年10月、現役引退を発表した。
「動けないわけでもないし、今も正直『何で?』と思っている。でも彼は、周りからもう限界だと思われて引退するっていうわけじゃない。これってすごいこと。自分のタイミングで辞めることってなかなかできないことだから」
今節、苦楽を共にした盟友との再会なるか。「一緒にプレーしていた人が対戦相手で、またピッチで会えた瞬間というのは嬉しいもの。引退するかもしれないけれど、お互いまだまだ頑張ろうと伝えたいですね」
今節、二人にとって最後の熱い真剣勝負が繰り出すか。併せて注目の一戦である。
Reported by 仲本兼進