止まらない。
J2残留へ勝ち続けるしかない大宮アルディージャ。明治安田生命J2リーグ第39節、アウェイでの藤枝MYFC戦で今季初の逆転勝利を収め、実に3年ぶりの4連勝。第35節終了時点で9あった残留圏との勝点差を4まで縮めることに成功した。重かった歯車がやっと動き出したところへ、今度は拍車が掛かり始めた。
「今の僕たちは失点しても取り返せる。チーム内でもそういう雰囲気が出ている。(中野)誠也くんのゴールでもう一度みんなスイッチが入って、そこから前へ前へというプレーがもっと出るようになりました」
チームの好調をそう振り返ったのはこの試合の立役者、袴田裕太郎。前への勢いを見事に結果につなげた、圧巻の2ゴールだった。
左サイドに途中投入された泉澤仁が相対する藤枝の選手を引き付けることで、空いたスペースに袴田が入り起点を作る。特に、84分にDFが1人退場となった藤枝は、5-3-1でブロックを作ろうとしたが、大宮は左右からクロスを入れ、袴田らの高さを生かしていった。
「仁くんがサイドで1対1で仕掛けられる選手なので、自分は内側で受けたり、仁くんが受けたところを背後にランニングするという意識ができていました。そういったところが、クロスに対して飛び込めるような状況につながったと思います」
そして89分、茂木力也の柔らかいクロスにヘディングで合わせ、土壇場での同点ゴール。言葉通り、高い位置で一度起点になってから、ゴール前に入っていって生まれた場面だった。その後にも同じような形でクロスに飛び込んでいったが、これはファールになってしまう。万事休したかと思われたが、最後の最後に大きなチャンスが待っていた。
高柳郁弥が大きく右に展開したボールを、茂木がヘディングで折り返す。これを富山貴光が頭で叩きつけたが、藤枝GKに阻まれる。そのこぼれ球が藤枝DFのクリアミスからポストに当たって跳ね返ったところを、袴田が頭でねじ込んだ。時計は、5分と提示されたアディショナルタイムを少々過ぎたところ。藤枝のキックオフで試合が再開された直後、タイムアップの笛がスタジアムに響いた。
「あの状況(自身の2点目)は正直あんまり覚えてないですけど、ゴール前にいれば必ず何か起こると信じてました。本当にいいところにこぼれてきてくれたと思います」
この場面で、やはりゴール前に詰めていた中野は「裕太郎がいなければ行ったつもりでしたけど、気づいたら裕太郎の頭がありました(笑)。俺より(得点への)嗅覚がありました(笑)」と、この試合でチーム最多となる4本のシュートを放った味方DFのストライカーぶりに、脱帽しきりだった。
無論、まだ何も得ていない。だが、J2残留への大逆転劇の可能性がより高まったことも、また事実である。
「自分たちもそれを信じてますし、残り全部勝つつもりで、という思いはもちろんあります。でも、自分たちは今、一日一日の練習に大切に取り組んで、地に足を付けて一戦一戦臨んでいます。また次の試合に向けて、しっかりといい準備をしていきたいと思います」
一つ一つの積み重ねが4連勝になった。ここから先もまた一つ一つ。その先にあるものを、しっかりとその手につかむまで――。
Reported by 土地将靖