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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:これからも続く“点を取るための努力”。名古屋に待たれるその結実の時

2023年10月19日(木)
これで公式戦11試合連続で勝利がないような状況だ。ルヴァンカップの準々決勝では第2戦で勝利しているが、延長戦、しかもPK戦突入寸前での逆転勝利であり、90分間での勝利を実に2ヵ月も経験していない。リーグ6戦2分4敗、ルヴァンカップ4戦1勝1分2敗、天皇杯1敗。カップタイトルの可能性を失い、リーグも3位から首位をにらむ位置にいたのが6位に後退してしまった。後半戦を迎える段階で福岡とただ2チームのみ三冠の可能性を持つチームだったが、一寸先は闇だ。だが、その闇の中で何もせずにおびえているような指揮官でも、選手たちでもない。



「勝つためにどういう形で、チームとして点を取っていくのかというところも引き続きやっていく」。長谷川健太監督はG大阪戦を控えた取材の場で穏やかに語った。試合で見られたネガティブな点にも目をやりつつ、この名将は常にチームの良いころに視線を注ぐ。ルヴァンカップ準決勝の2試合では福岡の堅守を破れず無得点、9月のリーグ戦では4試合3得点と攻撃陣がふるわない。夏にサウジアラビアへと移籍したマテウスの穴は思いのほか大きく、その穴埋めや別の戦い方を毎試合のように試行錯誤してきたが、残念ながら決定的な答えが出ていないのが現状だ。ある時は森島司を活かすために、前田直輝がユンカーとの相性の良さを見せればすぐ試し、中盤やウイングバックの人選をあれこれと模索して何とか最適解を出そうと奮戦した。

結果としてそれは数字には表れず、タイトルを争う舞台からは姿を消すことにはなったが、“試みた”という事実が消えるわけではない。長谷川監督は「そういうところもやったからこそ、ある意味では少し可能性もあるのかなとわかった部分もある」と言い、2ヵ月間のトライ&エラーを蓄積された経験として次に活かす。試合結果を度外視するわけでは決してなく、口癖の「現状の最大値をしっかりと求める」ことを常に念頭に置いた選手起用と戦術準備をもって実戦に臨み、勝っても負けても次への好材料を抽出して、また備える。判断基準は明解で、「結果を出した選手というのはそれだけ出番が多くなる」だ。ベテランも若手も分け隔てなく、確固たる基準がチームを引き締め、意欲をかき立てる。



では、リーグ戦一本に照準が絞られた次戦に向けて「結果を出した選手」は現状誰かと言えば、それは中島大嘉や久保藤次郎、森島司といった面々が思い当たる。そして8月21日のトレーニング中の負傷から復帰した米本拓司は待望の「中盤でタメを作れる選手」としての期待がかけられる。彼らのすべてがスタメン起用されるのかはもちろん試合当日になってみなければわからないが、これまでの長谷川監督の起用法を俯瞰してみれば、その可能性は十分にある。マテウスというピッチ中央でボールを保持して味方の攻め上がりを促す選手を失って以降、チームはその代役をまずは求め、次にその役割を前線に求め、今は中盤に求めることになった。次はさらに分厚く、中盤の米本と前線の中島にその役割を分散させ、燻っていたユンカー、永井謙佑、和泉竜司、そして稲垣祥ら主力たちの力を正しく発揮させることが狙いになる。





「メンバーは、より点が入る可能性のあるメンバーを選んでいきたい」。長谷川健太監督は力強く言い切った。守備を疎かにはせず、しかしあくまで視線は相手のゴールマウスにロックオンしている。決して守りに入ることなく、アグレッシブに攻めて、攻め勝つ想いは不変にして一貫した名古屋のコンセプトだ。「点を取るための努力というところを引き続きやっていく」(長谷川監督)、その結実の時が今度こそ訪れることを、誰もが心待ちにしている。

Reported by 今井雄一朗