Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:大宮】苦境をも楽しむ。岡庭愁人の土壇場の胆力

2023年10月12日(木)


チームに勢いをもたらすピンポイントクロスだった。

明治安田生命J2リーグ第38節。大宮アルディージャは3試合ぶりのホームゲームに、残留ライン20位に位置するレノファ山口FCを迎えた。大宮にとっては逆転でのJ2残留へ絶対に負けられない一戦、試合立ち上がりから攻勢に出ようと、その口火を切ったのが岡庭愁人だった。


3分、高柳郁弥のパスを受け右サイドを駆け上がっていく。深くまでサイドをえぐったところで、思い切り右足を振り抜いた。鋭いシュートは惜しくもクロスバーをかすめていったが、これが布石となって効いていた。

15分、山口のパスミスを拾った小島幹敏がドリブルで前進。周囲の攻撃参加を促すように速度を下げると、それに呼応して加速したのが岡庭だった。

ゴールライン際まで到達した岡庭は、しっかりとゴール前を見据え、精度の高いクロスを送る。これが室井彗佑の先制ゴールにつながった。



「その前に自分がシュートを打っていたのもあって、相手GKが対シュートの体勢に入っていました。ムロ(室井)や(茂木)力也くんの動きも見ることができていたので、少し柔らかいボールを冷静に、丁寧に出せたかなと思います」

アンジェロッティの追加点があり、試合終盤山口に1点を返されたが2-1で6ポイントマッチを制した。今季初の3連勝には、堅守が不可欠だったことに疑いはない。

「自分自身の良さである寄せやカバーも含めて、強度は出せてると思います。でも、チーム全体の強度があってこその堅い守備ですし、そこがぶれたら終わりだと思うので、自分がチームを引っ張って強度を示していきたいです」



この先も、1ポイントすら落とせないギリギリの戦いが続く。だが、岡庭はこの状況を「楽しめている」と言う。

「本当にひりひりする試合が多いですけど、何より大宮の歴史を壊さないために、そして自分自身もここで一頑張りしたら大きな成長を遂げられると思っています。今は練習からとても充実してますし楽しめているので、残り4試合でさらなる向上をできれば、と思います」

苦境すら自らの成長の糧としようとする、その意気に恐れ入った。今の大宮には、やってくれそうな、そんな雰囲気が漂い始めている。

Reported by 土地将靖