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【取材ノート:神戸】強い神戸が戻ってきたC大阪戦。要因は“前向き”なマインドセット

2023年9月27日(水)
上位陣との対戦が続く9月のヴィッセル神戸。明治安田生命J1リーグ第27節の7位・広島戦には敗れたものの、翌28節の6位・C大阪戦に勝って首位をキープ。いよいよ今週のフライデーナイトJリーグ、通称「金J」では2位・横浜FMとの首位攻防戦を迎える。ここに勝てば、次節の鹿島戦や他チームの状況次第では最短で10月28日のアウェイ湘南戦で悲願のJ1リーグ初制覇が決まる可能性もある。まさに今節はタイトル争いの“天王山”である。

ここ数試合は神戸らしいサッカーができていなかった。“神戸らしい”とは、激しいハイプレスから迫力あるカウンター攻撃を仕掛け、またロングフィードからセカンドボールを拾って相手陣内に押し込むストロングスタイルである。猛暑の影響がなかったとは言い切れないが、最大の原因は失点にあったようだ。

神戸は8月19日の24節・柏戦から天皇杯準々決勝の熊本戦を含めると公式戦5試合連続で相手に先制点を奪われている。それでも大迫勇也の決定力や山口蛍のスーパーボレーなどでなんとか勝点を積み上げてきたから今の順位(首位)があるのだが、神戸らしさが出せていたかといえば答えは「NO」だろう。だが、直近のC大阪戦では吉田孝行監督が「これぞ神戸という試合ができたと思います」と力を込めたように、本来のアグレッシブな姿が戻った。暑さが少し和らいだ影響もあるだろうが、最も大きな要因は気持ちのベクトルが“前向き”になった点だ。気持ちの変化は久々の先制ゴールという形で表れた。

59分。初瀬亮が相手GKとセンターバックの中間あたりに落ちる、曖昧で絶妙な浮き球パスを送った。それに反応したのはアカデミー育ちの佐々木大樹。センターバックに走り勝った佐々木は、そのままドリブルでエリア内に侵入し、落ち着いてゴールネットを揺らした。


試合後、佐々木は本来の姿を取り戻したチームに関して、こんなコメントを残している。

「正直、最近で言ったら失点をすることが多かったんですけど、そこで失点をしないっていうことを考え過ぎて後ろ向きになっていたのかなと思います。だから、自分たち発信で守備をして、自分たち発信で攻撃をしようと話をしていました。その前向きな気持ちを今日は出せたのかなと思います」

サッカーに限らずスポーツの世界で「課題の修正」は大きなテーマだ。だが、それがネガティブな方向へ向かうとスランプに落ちる可能性がある。相手に先制点を許してきた神戸は、知らず知らずのうちに負のスパイラルに陥ったのかもしれない。

だから、課題の修正にフォーカスすることを一旦捨てて、「長所の探究」へとマインドセットした。結果、C大阪戦ではハイプレスがハマり、セカンドボールを回収して押し込む“神戸らしさ”が出せたのかもしれない。

前節に鹿島との上位対決を制した横浜FMには勢いがあるだろう。だが、今の神戸は強い。今度の金曜日は今季で最も熱い夜になりそうだ。

Reported by 白井邦彦