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【取材ノート:長野】髙木パルセイロ。初勝利を経て、“因縁”の対決へ

2023年9月14日(木)


「強いチームを作られているなと、やりながら思っていた。ただ、我々も強いと思っている。ゲームになったら先輩とか後輩とかはあまり関係なく、逆に先輩の初めての黒星を付けられたのが僕で良かった」

AC長野パルセイロは前節、福島ユナイテッドFCに1-0と競り勝ち、新体制2試合目にして初勝利。髙木理己監督にとっては、帝京大学の先輩・依田光正監督が率いる相手だった。当時から親しい間柄だったようだが、そんな旧友に初黒星をつけて喜びをあらわにした。

福島は依田監督の就任以降、8試合負けなしと好調を維持していた。それでも長野は一歩も引くことなく、開始からフルスロットルで戦う。15分、佐藤祐太の2試合連続ゴールで先制する。その後は押し込まれる展開が続いたが、最後まで集中を欠かさず6試合ぶりの無失点。虎の子の1点を守り抜いた。

新体制初陣となった前々節・愛媛FC戦では、首位を相手に1-1と肉薄。そして前節は好調の福島を下した。たしかな手応えを得る中、次に迎えるのは“因縁”のFC今治戦だ。前回対戦ではホームで0-4と大敗。髙木監督が率いていたチームに対し、個の力で圧倒された。今治はその後の5試合で1勝4分と、引き分けがかさむ。順位こそ4位だったが、勝点を積み上げきれないことを理由に、髙木監督が解任となった。

そこからわずか1カ月足らずで、髙木監督は長野の指揮官に就任。今節はコーチ時代も含め、約2年間在籍した古巣との対決となる。前節・福島戦後の会見では、今治という名前が3度も出てきた。上位に踏みとどまりながらの解任であれば、思うこともあるだろう。「あくまで次の対戦チームであること。それでご容赦ください」と笑みをこぼしたが、その胸中やいかに――。

前節に今季初の無失点を達成したGK金珉浩も「(髙木)理己さんにとっては最近までいたチームなので、絶対に負けたくないと思う。僕らも絶対に負けたくない。ホームで0-4と負けているので、アウェイで借りを返したい」と意気込む。

ガイナーレ鳥取時代から指揮官を知る杉井颯も、闘志を燃やす。今治戦に向けて「髙木監督は内に秘めた想いがあるのではないか」と問うと、「それはそう。僕らもホームで(0-4と)負けたことを忘れてはいないし、サポーターもそうだと思う。ここでやり返す気持ちを持ってやらないといけない」と語気を強めた。

チームとして平常心を保ちながらも、心の中では特別な試合だと分かっている。今治は工藤直人ヘッドコーチが監督を引き継いで以降、1勝2分2敗と低調気味。ここで“髙木パルセイロ”が勝利し、解任したことを後悔させるまでだ。

Reported by 田中紘夢