3年ぶりの復帰から2ヶ月。背番号11の黒川淳史も目に馴染んできた。
左シャドーでスタートしたポジションも、現在は3選手で中盤をカバーする、その一角を務める。豊富な運動量で献身的なプレーに腐心する。
「3枚の連動とかスライドのところは上手くいってきている。相手にボールを持たれても怖いところまでは進入されていないので、そこはいい点です」
その中で、やはり課題は攻撃面だろうか。守備でピッチを駆け回る中盤の3人が、横方向の動きだけでなく、前にも出ていかなければければ攻撃に厚みは出ない。今はどちらかというとバランサー的な動きに比重のかかる黒川だが、例えば明治安田生命J2リーグ第33節、モンテディオ山形戦の32分の場面のように、黒川が前を向くシーンを多く作りたい。
「徐々に試合勘は慣れてきたというか、ここ何試合かはずっとスタメンで出場できているので、試合の入り方や時間の使い方は少しずつ感覚が戻ってきたかなとは思います」
そう言って今後へ意気込む黒川だが、未だ生まれていない自身の復帰後初ゴールへは、それほど貪欲…というほどでもないようだ。
「入る時は入る、という感じです。決めないといけないというのはあるんですけど、それで周りが見えなくなって、パスを選択したほうがいい場面で打っちゃうとかは良くない。自分のやるべきことをやっていれば返ってきてくれると思いますし、チームとしてしっかりとゴールが奪えるようにやっていきたいと思います」
クラブとしては、窮地に救いの手を求めたオファーであったが、それは黒川にとっても同じだったのかもしれない。FC町田ゼルビアに移籍した1年目の今季、シーズン序盤に4試合で途中出場し1得点を決めたものの、その後は天皇杯に出場しただけで、ほぼ構想外と言われても仕方のない印象だった。それだけにこの移籍の意味合いは、黒川自身にとっても小さくないはずだ。
「せっかくこういうチャンスをいただいたので、チームのために、最大のミッションは残留ですし、それを成し遂げることがここに来た目的だと思っています」
そのためには、自分が点を取れなくてもチームを助けるプレーで貢献したい、とも語る。
明確に言葉にすることはなかったが、育ててもらったクラブへの気持ちは、黒川の中にも大きく、強いはずだ。ミッションを果たすことで恩返しをしてくれるなら、これ以上喜ばしいことはない。その思いを、プレーで見せてほしい。
Reported by 土地将靖