監督交代という重大な局面を迎えたチームは、前節、カマタマーレ讃岐に0-1で敗れ、今シーズン2度目の連敗となった。3試合、勝利から遠ざかり、昇格争いからズルズルと後退し始める難しい状況だ。しかし、プロ15年目の三門雄大は、ベテランらしく地に足を着けて前を見据えている。
「大宮で残留争いをしているときも、こういう難しい状況はありました。上との勝点差を見ながら、焦って“これだけ連勝しないと……”と、つい星勘定しがちです。だけど、連勝はそう簡単にできるわけではない。できるのはポジティブに、次の試合に向かうことのみです。それも、あまり先を見すぎずに」
三門がポジティブに構えられる理由の一つが、シーズンも佳境に差し掛かるこの時期に連敗したにも関わらず、J2昇格圏の2位、カターレ富山との勝点差は7で踏みとどまれていることだ。しかも、まだ15試合残っている。
悪い流れを断ち切って、いま一度、上昇する機運を生み出すために。必要なのは、ベクトルを自分に向けることだと三門は考える。
「何のためにプロとしてサッカーをするのかというと、自分のためであり、家族のためであり、応援してくださるファン、サポーターみなさんのため。みんなピッチで一生懸命やっているのはよく分かります。でも、連敗しているこの2試合を振り返ったとき、自分やファンのみなさんに『100パーセントでプレーした』と胸を張れるかというと、そこはクエスチョンだと思う。だからわずかな隙が生じて負けている」
それゆえに次節、アウェイの松本山雅FC戦は、きっかけをつかむ絶好機と捉える。
「たくさんの観客が入り、スタジアムの雰囲気もいいと思う。簡単な試合にならないと分かっているけれど、ここで山雅を倒せば自分たちは勢いづける」
勝利のためにはゴールが不可欠だ。前節・讃岐戦は完封負けしたが、夏に期限付き移籍で二度目の加入を果たしたFW千葉寛汰は、前々節・FC岐阜戦まで3試合連続ゴールで4得点と結果を出している。前線にボールを送り届ければ、ゴールの可能性も自ずと高まる。
「讃岐戦の後に寛汰に言ったのは、動き出してボールが出てこなくても、『ああ……』とプレーをやめてしまうのではなく、もっと味方に要求してほしい、ということ。『こっちにパスを出せよ!』と怒るくらいでいいから」
さまざまな重圧が掛かる中、プレーが小さくなってパスを出し切れない状況に陥っても不思議ではない。そこで『パスが来ないから』と足を止めてしまえば、さらにパスが出しづらくなる。チーム全体、動きがどんどん鈍くなってしまう……。
流れを好転させようと、今までよりもさらに密にコミュニケーションを取りながらプレーするつもりだ。
「ミスを怖がらず、要求し合ってサッカーをしようとみんなには言っています。ミスしてピンチになるかもしれないけれど、そこはみんなでカバーすればいい。求め合って、一つになって勝利をつかめば自信になるし、互いに信頼も深まる」
無尽蔵とも思える豊富な運動量でピッチを駆けるプレーぶりは、36歳の真夏でも少しも変わらない。ベテランボランチは、チームが一つになって勝利に、昇格に突き進むため、走り続ける。
Reported by 大中祐二