ついに、やっと、とうとう決めてくれた。大卒ルーキーの室井彗佑が、プロ初ゴールを決めた。
明治安田生命J2リーグ第30節、対ファジアーノ岡山戦。一進一退の試合展開の中、88分に岡山に先制を許す苦しい展開。それでも、途中出場のストライカーはあきらめていなかった。
「本当はシャドーの位置だったんですけど、最後はシャドーじゃなくて、ずっと前にいて中に入って“ボール来い”って思ってました」
そして、アディショナルタイムを4分以上過ぎた試合終了直前。岡庭愁人のクロスをピンポイントでとらえると、そのボールはゴールポストのファーサイドに吸い込まれていった。記念すべきプロ第1号は、土壇場でチームに勝点1をもたらす貴重なゴールとなった。
「本当にすごく遅い初ゴールになりました。これだけ取れなかったのは初めてですし、長かったです」
プロ入り前年の2022年関東大学リーグ1部得点王のタイトルを引っ提げてのプロ加入。チームの期待は大きく開幕戦からベンチに入り、ゴールを狙った。だが、初ゴールはなかなか生まれなかった。
実は、その2022年もファーストゴールは第6節と、決して早くはなかったものの、それ以降はほぼ2試合に1得点のペースでゴールを決め続け、得点王の栄冠に輝いた。
「去年も1点目は遅かったんですよね。でも、そこからはコンスタントに取れたので、1点取れば変わると思います」
第13節FC町田ゼルビア戦からは先発2トップの一角を占めるようになるが、やはり結果が出ない。そして第17節ベガルタ仙台戦でアクシデント。左ハムストリングの肉離れで、戦列を離れた。
だが、この望まざる休息は、室井にとって転機にもなった。
「あのケガがあって良かったとは言えないですけど、すごくいい時間だったと思います。自分を見つめ直す時間もありましたし、ケガの期間はずっとトレーニングをしてきました。体幹の部分であったり、復帰前だったらすぐ転んでたところで簡単に倒れないとか、そういうのは出せてるんじゃないかなと思います」
スピードを生かし、相手にとって危険な存在であり続け、そしてついにプロ初ゴールを決めた。ここからはゴールを量産し、チームの勝利に、勝点3に貢献することが求められる。
「これで点を取れたことでもっと出場時間も延びると思います。本当に結果の世界なので、次も結果を残したいですし、チームの勝ちにつながるゴールを決めたいです」
偶然の産物を決めた者はこれまでも少なくない。覚醒の一発かどうか、それはこれから自らの力で証明していかなければならないものだ。室井にとってのチャレンジは、むしろここから始まったと言えるだろう。そのポテンシャルは持ち合わせているだけに、今後がいよいよ楽しみである。
Reported by 土地将靖