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【取材ノート:清水】勝負強さを増してきた秋葉エスパルス。大一番・町田戦に向けて培ってきた力とは

2023年8月18日(金)
今週土曜日(8/19)、今のJ2最強がどこなのかを占う戦いが始まる。
首位を独走する町田に3位・清水が挑戦する大一番だ。町田は前節で2位・磐田との天王山に競り勝ち、1試合消化が少ないながら磐田に勝点9差、清水に11差をつけている。後半戦に入って敗れたのは7/22の千葉戦(第27節)だけで、現在は3連勝中。戦いぶりはどこよりも安定し、失点は1試合平均0.79点で、東京Vに次いで2番目に少ない。

対する清水は、秋葉忠宏監督就任以降も多少の浮き沈みはあるものの、着実に勝負強さを身につけつつある。とくに直近は、3試合とも1-0で3連勝。8試合負けがなく(6勝2分)、プレーオフ圏外から3位まで上がってきた。4~5月の爆発的な得点力を発揮した時期と比べるとゴール数は物足りないが、1点取れば勝てるチームになってきたのは大きい。
とくに終盤の試合運びが落ち着いてきたのは大きな進化だ。守りが安定して決定機をあまり作られていないだけでなく、自分たちがボールを保持しながら、攻めながら時間を使うこともできている。
「うまくいってるときに勝てるのは当たり前ですけど、そうじゃないときにも勝てるのが本当に強いチームだと僕は思っています」と秋葉監督は言うが、第29節・東京Vとの上位対決はまさにそんな試合だった。

そんな勝ちきれる力が出てきた要因のひとつに、原輝綺の復帰がある。スイスへの期限付き移籍から7月に戻ってきた原は、7/22栃木戦の71分から出場し、次の岡山戦から3試合連続先発。その間、彼が出場していた時間には1点も取られていない。
今は右サイドバックが主戦場だが、センターバックもボランチも高いレベルでこなし、攻撃でも守備でもミスの少ないプレーを続けている。そんな原がいることで、選手交代をすることなく3バックと4バックをスムーズに行き来できるというメリットが生まれる(3バック時は原が右CBに)。相手の出方や交代に応じて柔軟に配置を微調整し、隙のない対応ができるのは大きい。また、3バックにすると後ろが重くなりがちだが、原がボランチの位置まで上がってボールをさばくことで、より攻撃的に戦うこともできる。
「戦術・原輝綺もできますから大きいですね。ああいう何でもできるポリバレントな選手がいるとか、インテリジェンスのある選手たちが多いと、チームとしてどうなっても慌てずに対応できますし、戦術の幅がぐっと広がってきます」と秋葉監督も語る。

もちろん、したたかに守り切る力は原だけのおかげではない。経験豊富でインテリジェンスの高い鈴木義宜がDFラインを統率し、高橋祐治も安定感を増してきた。左サイドバックには山原怜音と吉田豊がいて状況に応じて起用することができる。そして、シュートを打たれたとしてもコースさえ限定すれば権田修一がきっちり止めてくれるという信頼感もある。白崎凌兵、ホナウド、宮本航汰らのボランチ陣も攻守に高いパフォーマンスを続けている。
「自分たちの時間帯じゃないときにも粘れるというか、しっかりと身体を張って守備をするというところは、徐々にですけど結果もついてきてますし、そこは自信持ってこれから12試合やっていけばいいのかなと思います」とキャプテンの鈴木義は言う。

ただ、町田に勝つためには、そのレベルをもう一段階上げなくてはならない。前節・山口戦の終了後に鈴木義は「今日も相手のチャンスはあったし、相手のクオリティがあれば、やられたシーンもあったと思います。そういうところにチームとしてしっかりと目を向けてやっていきたい」と振り返った。
ここ3試合で2回決勝点を決めているチームの稼ぎ頭・カルリーニョス・ジュニオ(11得点)も「次節はビッグマッチになる。僕らは常に町田のことを見ていました。今週の練習から勝点3を目指して頑張っていきたい」と引き締めた。カルリーニョスの好調さも、難しい試合に勝ちきれるようになってきた原動力となっているが、決めきる力もより高めなければならない。

おそらくは、どちらが隙を見せずに90分間戦い抜けるか、どちらが相手のわずかな隙を見逃さずに先制点を取れるかが勝負を分ける一戦になるだろう。技術・戦術だけでなく集中力、体力、したたかさ、経験値なども大きく関わるスリリングな戦い。そこで上回るだけの力は、今の清水にも、それを後押しするアイスタのサポーターにも備わっているはずだ。

Reported by 前島芳雄