6月の明治安田生命J3リーグ第15節・宮崎戦(●0-3)を経て次の讃岐戦に向けた全体練習前、MF武沢一翔は喜名哲裕監督に呼ばれた。そのときに副キャプテン就任の指名を受けたという。
「『引っ張ってくれ』と言われました。指名されたことは率直に嬉しいことですし、自分もそういう立場にいずれはならないといけないと思っていたので、実際にその役割をまっとうする立場となってより一層責任を持たないといけないと思っています」(武沢)
5月に指揮官が代わって、異例とも言えるシーズン途中での副キャプテン就任の要請となったが、彼は挑戦心強く快諾した。
大卒ルーキーとして昨年琉球に加入した武沢はボランチを定位置に、1年目から明治安田J2で35試合(うち、先発23試合)出場。活躍の場をJ3に移した今季も先発16試合を含むチーム最多の19試合プレーしている。ボールへの関わり方は常にポジティブな要素で、守備では球際激しく奪いにかかれば、攻撃でも受けられる場所に積極的に顔を出し、高い位置でボールを引き出す姿も彼の特長である。そして自陣から敵陣のPA内へ90分を通して「ボックス・トゥ・ボックス」の動きで走り回り、今季第2節・岩手戦では自身プロ初ゴールを記録するなど、今や攻守における不可欠な存在となっている。
かつ、チームの熱量が足りないと感じたらすぐに声を出し、どんなに疲れが溜まった状況でも味方の背中を押すことができる。それは、今年琉球の主将を務めるFW野田隆之介に引けを取らず、野田自身も仲間を鼓舞し勇気づけることができる無類の選手であるが、常にFWの位置から全体を見渡すことは難しく、周りに生かされる動きに専念したいという思いもきっとあるだろう。だからこそ中盤の位置から全体に気を配ることができ、チームメイトからも信頼を得る武沢がベテランと若手のパイプ役としてチームの牽引車となるにふさわしい人物と言えるだろう。
その上で武沢は「味方を鼓舞するだけでなく、試合中に起こった問題を解決させるための声」の重要性を認識し、自身がプレーしながら状況を頭の中で冷静に分析しチームの軌道を修正することも求められると実感する。先制されネガティブな状況になれば攻撃と守備の選手で齟齬が生まれやすくなりやすい。そうなったときにどちらの意見も汲み取って最善策を講ずることが自分の役割だと話す。
「大変ですけど、やりがいを感じています」
力強くそう言った副キャプテンは与えられた仕事に対してポジティブに向き合い、下位に沈むチームの抱える問題を取り除くべくひたむきに走り続ける。
Reported by 仲本兼進