期待の新戦力が即結果で応えた。東京ヴェルディからAC長野パルセイロに完全移籍加入した加藤弘堅は、明治安田生命J3リーグ第20節・SC相模原戦(◯1-0)でフル出場。合流5日目にしてスタメンを託されると、63分に直接FKを沈める。チームはこの1点を守り抜き、実に10試合ぶりの勝利。なおかつ13試合ぶりの無失点と、負の連鎖を断ち切った。
「4日間の練習でとにかく選手の特徴とか癖を見るようにして、分からないところは素直に聞きに行って…という作業をした」と加藤。決勝弾のFKに繋がったシーンは、自身のロングフィードから始まった。
佐藤祐太からパスを引き出すと、右サイドを抜け出した船橋勇真にダイレクトで送り込む。船橋の折り返しを受けた西村恭史がシュートフェイントで相手を交わし、ゴール前でファウルを受けた。
「あの瞬間に(船橋)勇真と目が合った。本人も試合前に『蹴ってくれたらルーズボールもどんどん行けるので…』と言っていた。一本蹴ってみようという感じだった」と加藤が話せば、受け手となった船橋も「(加藤)弘堅くんに入る瞬間、出るのが分かった。先に走り出して、そこにうまく入ってきた」と振り返る。
短期間で阿吽の呼吸を見せられたのは、加藤のコミュニケーション能力があってこそだ。「ゴールキック一つでも『繋いでいこう』とか『蹴ろう』と声を出してくれる。守備のスイッチも含めて、声を出して周りをまとめてくれた印象があった」とシュタルフ悠紀監督。ビルドアップの起点となるGK濵田太郎も「どこが空いているかを言ってくれるので、だいぶ助けてもらっている」と頼もしさを覚える。
その“貢献”はピッチ内にとどまらない。東京Vでチームメイトだった佐古真礼は「ベテランで若手の面倒見も良いし、気配りもしてくれる。すごく良い雰囲気を作ってくれるので、自分たちも良い意味でいじりやすいというか、接しやすさはある」と14歳上の大先輩を慕う。
西村も北九州時代に被りこそしなかったが、共通の知人を介して面識があった。こうしてチームメイトとなり、「一緒にできるとは思っていなかった」と驚きを示す。北九州で加藤とプレーしていた盟友・高橋大悟からも面倒見の良さを聞いており、「次は俺がお世話になろうかな」と笑みを浮かべる。
すでに周囲からの信頼を得ている加藤。「スポットライトを浴びるような立ち位置にいきたいと思ったことは一回もない」と謙虚さを忘れないが、彼には味方にスポットライトを向ける力がある。周りを生かし、生かされる関係がより強固なものになれば、自ずとチームの結果にも反映されるはずだ。
Reported by 田中紘夢