「どうしても触らなきゃと思って、パッと出ちゃいました。すみません」
明治安田生命J2リーグ第27節、水戸ホーリーホック戦を終えて大森理生は、57分のセットプレーで警告を受けた場面を振り返り、そう頭を下げた。
高柳郁弥のコーナーキックをファーサイドで市原吏音が折り返す。中央で待ち構えていた大森が跳ぶがわずかに届かず、思わず伸ばした左手がボールに触れた。
何としてもゴールが欲しい、その気持ちが痛いほどに伝わってくる。現在のチームの窮状を象徴するような場面だと感じられた。
今季FC東京から期限付き移籍してきた大森。なかなか出番をつかめずにいたが、原崎政人監督体制となってから出場機会を得て、最終ラインの一角を構成。第26節栃木SC戦、第27節水戸戦と2試合連続の無失点に貢献している。
「もちろん僕たち(守備陣)だけじゃなくて、ボランチ、サイドハーフ、トップの選手と、本当にチーム11人で前からつながって守備できている結果がゼロにつながっている。そこはチーム全体として改善できている」
徐々に守備の安定を取り戻しつつある中で、やはり課題は攻撃面にある。勝点3のためには勝利が、勝利のためには得点が必要だ。だが、特に水戸戦の前半では、単純にロングボールを放り込むのみに終始。攻撃の形自体を作れなかった。
「ボールを出すほうももらうほうも準備が遅くて、結果的にああいうラフなボールになってしまった」
単純に個々の選手のメンタルの問題なのか、それ以外にも原因はあるのか。新戦力では、シュヴィルツォクが可能性を感じさせた一方、「攻撃的な選手」と自負する飯田貴敬が目立つ場面はほとんどなかった。黒川淳史を含め新たに加わったタレントを無駄にしてはいけない。前週にベガルタ仙台を離れたばかりで電撃的に就任した渋谷洋樹ヘッドコーチのサポートも受けながら、戦術的な整備が急務となる。
大森もその点は自覚している。
「ボールの動かし方や後ろからのボールの送り方も、まだまだ足りてない。強度の基準をどんどん上げていきながら、そうした細かい技術や連係面もチームで合わせていきたい」
そこを成し遂げなければ、目指すものには到底到達できるものではない。若きディフェンダーに期待が懸かる。
Reported by 土地将靖