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【取材ノート:福岡】福岡の希望の星。大ケガから復帰の道を歩む森山公弥

2023年7月24日(月)


多くのサポーターが詰めかけた7月23日の公開練習。「黄色の(ビブスの)7番って誰ですか?」。筆者の隣で見ていた観客から突然尋ねられた。それはポゼッション練習での出来事。その観客は、がむしゃらにボールを追い、力強くボールを奪った瞬間の姿に心動かされ、その名を確かめたかったようだ。すぐに答えた。楽しそうにピッチを駆け巡っていた森山公弥のことを。

福岡の下部組織出身の21歳。3年目を迎える今シーズンは副キャプテンを任された。その理由をキャプテンの奈良竜樹はこう語る。「副キャプテンには僕が指名したところがあって、今このチームでユース上がりの選手は彼しかいない。今レンタルで北島(裕二)が東京Vに行っていますけれど、今この福岡にいるのは(森山)公弥だけだから、ユースから上がった選手がトップでしっかり活躍して、アカデミーの選手たちがそういう選手を目標にしてどんどんトップ上がってくる、そういうところを期待して指名したところがあります。
だからと言って、いきなりそんなすぐに変われるものじゃないというふうにも思うし、ただ、もう年齢的にも変わっていかなければいけない年齢ではあるというふうに僕は思っています。しっかりと周りに発信していかなければいけないというところで言うと、そこがまだ弱いなというふうに僕は思っていて、そこで役割というか立場というか、副キャプテンという役割を与えて、強制的にというわけではないですけれども、そういうふうに自分の中での覚悟を持ってほしいと思って僕は指名しました」。

そんな期待を掛けられて始まった今シーズンの森山にアクシデントが襲い掛かる。3月のJリーグYBCルヴァンカップグループステージ第1節の新潟戦で左膝外側半月板損傷。「(自分の)サッカー人生で初めて大ケガをしたので、最初はすごく沈んだ」。全治6カ月の大ケガ。それでも気持ちを切り替え、自分自身を奮い立たせた。「『本当にやるしかないな』と思ったし、ずっとトレーナーも声を掛けてくれて、選手のみんなも声を掛けてくれて、それで本当は(全治)6カ月の予定だったんですけど、1カ月ぐらい短くできましたし、周りのサポートのおかげでここまでやってこれました。もともと(復帰まで)余裕があるように設定されていて、その中で(メディカルスタッフが)自分の様子を見ながら『短くできるよ』という話はしていたので、本当に上手くいって、順調にいったからこうやって少し早く復帰できるようになったのかなと思います」。

7月に入って全体練習に復帰。この日初めて強度の高さが求められるポゼッション練習に加わった。「(コンディションは)7割ぐらいは戻ってきたので、あとはゲーム勘のところだったり、試合勘のところは全然戻っていないのでそこはやりながら戻せればと思います。すごい楽しかったし、こうやって見てもらえることは嬉しいですね」と笑顔も交えながら話してくれた森山。ユース時代にプレーしていたCBに加え、ボランチでもプレーするユーティリティプレーヤーは「ボランチで左利きというところは武器にできると思いますし、ボランチもやりながらいろんなポジションをしてきてボランチに入るというのは多分自分だけなので、そうやって周りのポジションの気持ちというか、その辺を理解しながらプレーできれば周りの選手と合いやすいようなプレーもできるかなと思うので、そういった部分を活かしながら自分の得意のキックだったり、基礎(技術)のところも活かしてどんどんチャレンジする気持ちでやりたいと思います」。

チームはリーグ戦3連勝、公式戦4連勝でサマーブレイクに入った。現在、10位に位置するリーグ戦に加え、ルヴァンカップと天皇杯ともに勝ち残っている。今後、今シーズンの福岡の目標である「リーグ戦8位以上、カップ戦ベスト4以上」を目指す中で、森山に出場機会は巡ってくるはずだ。

「3年間変わらずリーグ戦出場ということは目指していますし、カップ戦はルヴァンカップも自分の後輩のユース(の選手たち)がここまでつないでくれたので、自分しか若い選手いないですし、しっかり出てつないでくれた分、結果を残すという気持ちでカップ戦をやりながらチャンスがあればリーグ戦にも出場してチームにここまで絡めなかった分、ここから貢献したいと思っています」

ルヴァンカップのグループステージではU-18の前田一翔に加え、西村活輝も出場し、プライムステージ(準々決勝)進出を決めた第6節の柏戦では決勝点をアシストした。ユースの後輩もチームの力となり、つながってきたバトン。その想いを背負い、福岡の未来を担う男は、中断明けの活躍を目指して着実に準備を進めている。

Reported by 武丸善章