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【取材ノート:琉球】ボランチ抜擢で存在感増す平松昇が絶やさない前向き姿勢

2023年7月21日(金)


「めちゃめちゃ前向きですよ。ボランチでプレーすることで間違いなく幅が広がっています」

今季湘南から期限付き移籍で加入した平松昇は、与えられたポジションで全身全霊を傾けている。

元来、両翼をテリトリーに攻撃の起点を作ってきた選手で、磨き上げたドリブルテクニックで翻弄し、マークにつく相手を引き付けたことで空いたスペースやフリーとなった選手へのラストパスを演出する。琉球でも当初からサイドアタッカーとして点に絡む攻撃を期待され、第7節の北九州戦では自ら蹴ったコーナーキックを柳貴博の頭に合わせゴールにつなげる精度の高い左足を披露するなどプレースキッカーも担っている。

その平松に転機が訪れたのは第11節・相模原戦。このときチームはリーグ戦3連敗を喫し、倉貫一毅監督が退任した直後。今年から強化部補佐を務めていた喜名哲裕監督が後任となってすぐ、ボランチへのコンバートを促した。
「2月の段階からボランチで使うと面白いかなと思っていて。まず誰よりも走れるというところ。そしてフリックでコースを変えるパスもできる。これまで培われた前を向く姿勢だけでなく球際にも積極的に行ける彼の特性はボランチで生きるだろうなと考えていました」(喜名監督)

実際、昨季プレーした金沢でも平松はボランチで起用されたことがあり、定位置から最小限の動きでボールを散らして後方支援に徹していた。ゆえに攻撃に関わる回数は制限されたが、ボールを刈る場面は鮮明だった。攻撃に関わる姿が目に映りやすいが、守備の貢献度も高い。トランジションでピンチをチャンスに変え、攻撃を組み立てる彼のプレーはボランチで上手くアジャストされている。
ゆえにサイドハーフとしての名残も失われていない。ポジション問わずドリブルを意識しているのが彼の特性。対峙する相手と果敢に一対一を挑んで剥がしたり、キープ力を生かして相手を引き寄せて味方をフリーにしチャンスメイクする姿はボランチでも生きている。それでも奪われたら奪い返す。その前向きな姿はとても清々しい。

リーグ戦もあと1試合で前半戦が終わる。現状13位という結果は思い描いた順位ではない。それでも彼は決してマイナス思考になることはない。「荒波に揉まれながら、それでも積み重ねた経験は無駄にならない。リュウちゃん(野田隆之介)とかいろんな選手と勝つための志を共有して、それがリーグ後半戦に向けて実践できればと思っています」(平松)
難局に立ち向かい、苦境も楽しむメンタルの強さが平松のストロングポイントである。

Reported by 仲本兼進