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【取材ノート:今治】土肥航大は2023年のFC今治にとって「ラストピース」となり得るか?

2023年7月13日(木)


この夏、サンフレッチェ広島から期限付き移籍で加入した土肥航大がFC今治に合流したのは、7月9日の日曜日。この日、行われた地元アマチュアチームとのトレーニングマッチを見学すると、オフ明けの練習から新たなエンブレムを胸に、トレーニングに励んでいる。「改めてサッカーをしていると実感できる。楽しい」と充実感をかみ締める。

広島ユース育ちのレフティーは、2020年にトップチームに昇格すると、プロ3年目の昨シーズンはJ2の水戸ホーリーホックに期限付き移籍。リーグ戦26試合に出場し、2ゴールと経験を積んだ。さらに飛躍するため、今シーズンは同じJ2のヴァンフォーレ甲府に活躍の場を変えた。だが24節終了時点で3試合出場にとどまり、こだわっているゴールはゼロ。思うように持ち味を発揮できず、苦しんだ。

そして、夏のタイミングでFC今治からオファーが届いた。J3とカテゴリーは一つ下げることになるが、「自分のプロキャリアも、もう4年目。一日一日を無駄にしたくない」と、シーズン中の再チャレンジを決断した。

今治の竹元義幸GMは、「すばらしい左足の技術と運動量がある、ボックス・トゥ・ボックスのボランチ。三門(雄大)と補い合いながらチームを活性化できる」と、同様に走力にあふれるベテランの名を挙げ、期待を寄せる。ボランチは今治にとって、シーズン開幕前にチームで唯一、補強が行われなかったポジションだ。そこの競争に加わるわけだから、大混戦のJ3を勝ち抜いていくための“ラストピース”になりたいところだ。

今シーズン前半、甲府でチャンスをつかみ切れなかった理由を、自身は冷静にとらえている。

「自分の一番の課題である守備の強度が、求められるレベルに届いていませんでした。それによって試合に出られず、自分の特徴も発揮することができなかった。もったいなかったです。

今治では持ち味である展開力や、動き続けて何回もボールに絡むミカさん(三門)のような部分を出していきたいですね。それから縦パス、スルーパスというところも今治では求められると思っています。課題の守備も引き続き向上させながら、チームのJ2昇格に貢献します」

目指すボランチ像の1人が、同じ広島アカデミー出身で、欧州でプレーする川辺駿(スタンダール・リエージュ)だ。

「それこそ駿くんはボックス・トゥ・ボックスの選手で、ボランチですけど点も取れる。そこは僕も見習いたいし、今治ではシーズン半分が終わったところからのプレーになりますが、得点にもこだわりたいです」

今治のゴール前でも、相手のゴール前でも輝きを放つ。そのために何度でも往復する。ゴールに向かって、前へ、前へと突き進んでいく姿勢を強めてくれたのが、昨年、水戸の秋葉忠宏監督(現清水エスパルス監督)の下での経験だ。

「秋葉さんはバックパスを禁止にするくらい、前を意識させるサッカーでした。前線にも相手を背負えるフォワードがいて、自分もどんどん縦パスを付けることができた。ポジションもボランチではなく、シャドーやトップといった、あまりやらないところでのプレーを経験しました。甲府の右サイドもそうです。その上で、今治ではボランチで勝負したい」

経験を成長の大きなエネルギーに変え、新たな道を切り開いていく。その道は自身のキャリアはもちろん、今治の将来にも連なる。

Reported by 大中祐二