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【取材ノート:神戸】アクシデント多発のDFライン。酒井高徳の“センス”が窮地を救う

2023年7月13日(木)
7月7日の明治安田J1第20節で新潟を下し、3位から2位に浮上した神戸。DFラインにケガ人が多発している中でクリーンシート(1-0)を達成し、首位・横浜FMにしっかりと食らいついた。とはいえ、台所事情が苦しいことに変わりはない。この難局をチームとしてどう乗り越えるか。今、神戸は正念場を迎えている。


前節の新潟戦は試練の試合だった。CB本多勇喜が試合前のアクシデントで離脱し、開始20分にはCBマテウス トゥーレルも自ら交代を要求してピッチを離れた。この試合でCB要員としてベンチ入りしていたのはプロ1年目の寺阪尚悟くらい。この状況で吉田孝行監督が白羽の矢を立てたのは寺阪ではなく、右SBで出場していた酒井高徳だった。

トゥーレルの代わりに飯野七聖を入れ、DFラインは右から飯野七聖、酒井高徳、大﨑玲央、初瀬亮という並びに。さらに酒井と大﨑の並びを入れ替えて守備のバランスを図った。この急造CBコンビについて、酒井は試合後にこんなコメントを残している。

「(コンビを組んだ大﨑は)よくコミュニケーションを取る選手の1人です。お互い微調整をしながら話をして、試合の中でうまく修正できました。ゼロで抑えられたのは、僕とレオ(大﨑)にとってポジティブな結果でした」

近年の神戸において、本職CBの選手がSBも兼任するケースはよく見られる。例えば、今シーズン前半戦の躍進を支えた山川哲史も本職はCBながら右SBとしても才能を開花させた一人だ。セルティックに移籍した小林友希や本多勇喜もCBと左SBの二刀流。若手では尾崎優成や寺阪も同じような流れを汲んでいる。

だが、本職SBでCBを兼務するパターンは稀で、在籍4年間で酒井がCBに入ることはなかった。

それでも酒井は器用にCBをこなして新潟をシャットアウトした。豊富な経験値から磨かれた“センス”がそれを可能にしたのだと思われる。長丁場のリーグ戦ではアクシデントはつきものだが、それでも崩れずに勝点を積み上げられるのはベテランの経験値が大きい。

新潟戦で神セーブを連発したGK前川黛也は、試合後にこんなコメントを残している。

「酒井選手はCBの経験はあまりないと思いますが、完璧に近いポジショニングや声掛けをしていたので、ほぼ何も言うことなかった」

今シーズンの酒井は負傷離脱した時期もあって、コンディション調整に苦しんでいる。おそらく今も自身が思い描いているピークパフォーマンスには達していない。その中でチームの窮地を救える酒井はタレント集団・神戸の中でも“格の違う”選手と言えるだろう。新潟戦は改めて酒井のすごさを知る良い機会となった。


Reported by 白井邦彦