「ジメッとした中で練習するのはなかなかキツイっすね…」と今まで経験したことのない沖縄独特の亜熱帯気候に苦笑いを浮かべつつ、「それでもアジャストしないといけないっすね!」と置かれている環境に前向きに克服しようとしているのがプロ1年目のセンターバック、森侑里である。
大宮のアカデミー出身で、筑波大を経て今年琉球に加入した森は、開幕から4試合連続で先発出場。途中コンディション不良で数試合ベンチ外となったものの、復帰した第9節の鳥取戦以降8試合連続でスタメン入りしている。クラブユースで培われた足元の技術は攻撃の出発地点となるだけでなく、レシーバーとしてボールの置き場所を把握しタメを作ることができ、敵をいなしながら味方の攻め上がりを促すプレーが彼の醍醐味である。
ゆえに、自分らしさを演じようともなかなか勝利という結果に結びつけられなかったことは本人にとってももどかしかっただろうし、「守備が落ち着くことで攻撃に時間を費やせるのは確か」と自覚しているからこそ上手く事が運ばず責任を感じていたかもしれない。それでも、悪戦苦闘しながら彼は実戦を経て日々成長する。
そのプロセスを辿る上で同じポジションで切磋琢磨する10歳年上の牟田雄祐は大きな存在である。センターバックでコンビを組み、その大きな背中を見ながらプロで戦う術を感じ取っていた。
「後ろでカバーしてくれたり、横にいて声をかけてくれたりと一見単純なことかもしれないけれどそれだけでも安心感が生まれるし、だからこそ自分も思い切ってチャレンジできる。自分を引っ張り上げてくれている牟田さんは間違いなく頼もしいですし、モチベーションも安心感も与えてくれる存在ってなかなかいないですけど(牟田選手は)もたらしてくれています」
そう話す森は、信頼するプロ11年目の彼の姿を見て背筋を正す。
1年でのJ2返り咲きを目指す今季。リーグ戦を折り返すまでにチームは何度も苦杯を嘗めてきたが、はっきりとした感触もある。
「前線の選手からここへ蹴ってほしいだとか、ここまで運んでほしいといった会話は常にやっているし、逆に守備では僕らから要求して、もうちょっと(守備で)顔を出してほしいだとかプレッシャーをかけてほしいとか、そういう要求をしあえる環境がある。そこですぐ合わせきれるところが琉球の良さかなと思います」
日々インプットを怠らず、適応力を発揮し自らの脚で未来を切り拓こうとする彼はこれからもたくましさが増していくことだろう。
Reported by 仲本兼進