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【取材ノート:藤枝】J1ライセンスを申請した藤枝。臥薪嘗胆の成長力で1年での昇格を目指す

2023年7月6日(木)
7月1日(土)、藤枝MYFCは、来季に向けてJ1ライセンスを取得するための申請を完了したことを発表した。

今季はJ2初昇格ながら「プレーオフ圏内(6位以内)に入る」という高い目標を掲げて新たなステージに臨んだ。そして開幕2連勝で首位発進し、その後は一時14位まで下がったが、そこから3連勝して11節終了時点で6位に浮上。前半戦を終えた時点では13位だったが、6位とは勝点5差。開幕前は降格候補に挙げられることも多かったが、J2全チームとの対戦を終えた時点で、高い目標を達成するだけの力があることを証明した。

だからこそのライセンス申請であり、審査結果はまだわからないが、本気でプレーオフ圏内に入り、1年での昇格を目指すという意識はチーム内でより強くなっている。

そこから生まれる向上心は、後半戦の戦いにも反映されている。

22節の秋田戦は、3節で今季初黒星を喫した相手に「相手の土俵でも勝つ」(須藤大輔監督)というインテンシティの高さを発揮して3-1で快勝。23節・山口戦は、6節に3-0で完勝した相手だったが、監督交代から大きく進化した山口の守備を崩し切れずに無得点。それでも失点も0に抑えて勝点1を得た。そして次の岡山戦では、前節の反省を生かして3得点を叩き出し、退場者が出て苦しくなった中でも逃げ切りに成功。これで後半戦は2勝1分となり、8位まで上がってきた。

負けた悔しさをバネにチーム全体で成長していくという修正力や成長力は、昨年も見せた須藤MYFCの強みと言える。昨年はそれがJ2昇格に結びついたが、今季の初舞台でもその強みは発揮できている。

藤枝はGKからきっちりとパスをつないで攻撃を組み立てていくスタイルだが、試合の立ち上がりでは相手のプレッシャーの強度が高いこともあって、どうしてもパス回しのリズムが出てくるまで時間がかかる面がある。その時間帯にミス絡みで失点して相手に流れを奪われ、敗戦に至った試合が前半戦では多かった。東京Vに0-5、清水に0-5、熊本に0-4で敗れた試合も、まさにそのパターン。前半戦では、36失点中の14点(39%)を前半30分までに奪われ、先制された試合は0勝1分8敗。そこが最大の課題となっていた。

それが後半戦では先制された試合がなく、前半30分までの失点は1点だけ。試合序盤では相手のプレスを裏返すロングボールも織り交ぜながらリスクを回避し、徐々に自分たちの形に持ち込んでいくという戦いができている。じっくり回して攻め崩すだけでなく、速い攻めやシンプルに裏を狙う攻撃でゴールを奪うこともできている。

その結果、パス本数やボール支配率が低下している面もあるが、自分たちのスタイルを捨てたわけではない。「(戦い方の)引き出しのひとつにしていくべき」と岩渕良太が言うように、より試合巧者になりつつあると見るべきだろう。

前節・岡山戦でも、退場者が出る前から理想通りの試合展開ではなかったが、その中でも勝点3をつかむ勝負強さを見せた。「(前半戦最後の)熊本戦は相当悔しかったので、それは選手にも響いて、奪われたら奪い返すとか相手に寄せるとかサッカーの大前提の部分をあらためて徹底させることができている」と須藤監督は言う。

試合の中で出た課題を明確にして、練習の中で修正し、次の試合に反映させる。そこで次に表われた課題も、同様に一つ一つ修正していく。その繰り返しで個人としてもチームとしても着実に成長を続けている。前半戦よりも“勝てるチーム”なりつつある。

次の甲府も前半戦で敗れた相手であり、追い抜くべき6位のチーム。「同じ相手にシーズンダブル(連敗)を食らってはいけない」と須藤監督はつねに語っており、次は甲府という壁を乗り越えるべき一戦。それをクリアして、またひとつ自信を積み上げることができれば、目標達成に向けてまたひとつ大きな一歩を踏み出すことにつながる。

Reported by 前島芳雄