「サッカーの話になると熱くなっちゃうから…」。盟友・森川裕基が取材の終わりを待つ中で、佐藤祐太はそう微笑みかけた。
「自分の中ではもう少し早く復帰したかったのが本音。チーム状況もチーム状況だったので、早く力になりたいという思いはあった」
その言葉の節々から、サッカーへの愛が伝わる。明治安田生命J3リーグ第10節・松本山雅FC戦(○2-1)を最後に、ケガで戦線を離脱。リハビリ中はジョギングしながらコーチングスタッフにパスを要求したり、見学に訪れた少年とパスを交換したりするなど、ボールに触れたくて仕方がない様子だった。
そんな“サッカー小僧”が、前節・FC今治戦(●0-4)で待望の復帰を果たした。61分から途中出場し、約30分間プレー。「自分の中では何もできずに終わってしまった」と悔やんだが、積極的にボールサイドへ顔を出し、球際でも厳しさを見せるなど、犬のように動き回った(愛称は“わさお”)。
佐藤が離脱する前のチームは首位を走っていたが、離脱後はまさかの6試合勝ちなし。気づけば13位に沈んでいる。彼の不在がすべてではないにせよ、その影響が小さくなかったのも事実だろう。
不在の間の6試合を振り返ると、複数得点が一度もなく、「後ろと前の繋ぎ目が足りていない印象はある」と話す。第4節・カターレ富山戦(△3-3)では、0-1で迎えた後半からボールサイドに絡む意識を高め、自身の1ゴールを含む全3得点に関与した。彼の言葉を借りるならば、いまは「ロングボールを蹴るのか、ビルドアップをするのか、どっちつかずみたいなところがある」状況。その中で「自分がジョイント役になれれば」と意気込む。
チームとしても、佐藤の復帰を追い風にしたいところだ。幼少期から対戦経験のある進昂平は「小学生くらいのときは(佐藤が)嫌いだった」と吐露。それでも「いまは頼りになる仲間」と声を弾ませる。冒頭で挙げた森川とは公私ともに仲が良く、彼のドリブルを生かす出し手にもなれる。シュタルフ悠紀監督もそうだが、Y.S.C.C.横浜でともにプレーした選手も数多くいる。そういった仲間を生かし、生かされるのも、佐藤の役割だ。
「順位を見たら、まだ(首位と勝点が)2桁も離れていないのはポジティブなところもある。救われているところもあるので、いくらでも反撃できると思う」。そんな“救われている”チームを上位に引き戻す救世主となれるだろうか。
Reported by 田中紘夢