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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:その出番が待ち遠しくて仕方ない、キャラ濃厚な夏の新戦力たち

2023年7月5日(水)
チームは横浜FMとの“決戦”を前にしているタイミングではあるが、前週から今週にかけてはチームに新風が吹き込んだこともまた大きなトピックではあった。6月25日に発表され、同27日にチームに合流した中島大嘉と、30日に発表され7月4日に合流した前田直輝は、タイトル獲得へ向けまい進する名古屋グランパスにさらなるパワーと勝点をもたらす良質の補強だったと言えるだろう。山口素弘GM曰く、今夏の補強はこれで締めということで、31名の陣容で彼らは後半戦を戦っていくことになる。



鮮烈というか強烈だったのが、中島である。札幌からやってきた21歳の“和製ハーランド”は、来年のパリオリンピック代表入りに向けても環境を変えたいという想いからの移籍でもあり、「これは自分のサッカー人生にとっても自分の人生そのものにとっても、すごい転機」と気合も十分。合流初日からダイナミックなプレーと豪快な語り口でチーム内外にそのキャラクターをアピールし、加入後初の報道陣との取材では何と23分も話しまくった。最初は真面目に語っているのに、徐々に話を面白くしようとするあたりはさすがの大阪出身か。「憧れの選手はいない。自分の中に“最高の中島大嘉”がおるから。でも最強すぎるんですよ、だってそいつ1試合10点くらい取るから。絶対無理でしょ」という問答には腹を抱えて笑わせてもらった。



ただし、サッカーについては真剣そのもの。加入したその週末に行われた松本との練習試合では2トップの一角として70分ほどをプレーし、無得点だったことで結果に対する責任も負った。「試合に負けましたし、フォワードとしてああいうチャンスがありながらも、決めきれずに負けたっていうのは自分の責任です」。自らの動き出しの癖や傾向をより強調しながらのプレーはしっかり新しい味方に見せられたという手応えはあったが、あくまで謙虚に試合も振り返る。「自分をこのチームのやり方にフィットさせていけば、自分のストロングももっと出ると思う」という持ち味には裏への抜け出しだけでなく、打点の高いヘディングもあり、コーナーキックでは特にその高さも際立った。「バーぐらいの高さでも叩けるんで」というその特徴はセットプレーからの得点も多い今季の名古屋にも合致するもので、「もっともっと引き出してもらいたい」という無邪気な笑顔からは、言葉だけではない自信の大きさが漂った。



一方で静かな迫力のようなものを感じたのが前田の帰還だった。オランダでの海外挑戦は彼にとっては夢の実現、その第一歩となるものだったが、デビュー戦で負った足首の負傷で1年半の期限付き移籍期間の多くを治療とリハビリに費やすことに。「一度名古屋に、グランパスに帰ってきたからと言って自分の夢を諦めるつもりもない」とヨーロッパでのプレーに未練がないと言えば嘘になるが、それでも「グランパスが優勝を目指す中で、『お前の力が必要だ』って言ってくれたことは、やっぱりものすごく嬉しいことだった」と、名古屋というチームに対する想いも今は強く持てており、今は復帰した古巣のためにと覚悟も据わった。長谷川監督も「主力になれる能力のある選手」とその力に大きな期待をかけており、強力な3トップに割って入る活躍を望んでいるようだ。



前田にかんしては出場が可能になる8月5日までの1ヵ月間で、まずはコンディションを整えることが最優先となる。ヨーロッパのカレンダーでは今はオフの期間であり、さらには「悔しいことにフルで出た試合が向こうではなかったので。試合勘っていうところも含め、練習試合などにも100パーセントで取り組みたい」と語る。負傷した足首は「もう全然気にならなくなってきた」と言いつつも、別メニュー調整で見たドリブルのキレはまだまだ本調子には程遠い。「今のサッカーは縦に速いので、トランジションのところではもっともっと切り替えを速くしないと」と、課題や目標となる姿は明確に捉えられているだけに、“あの”前田にどこまで戻せるか、それ以上のものを見せてくれるのか。彼が見せてきた数々の印象的なゴール、セレブレーションにまた酔わせてほしいと思っているのは筆者だけではないはずだ。

彼ら夏の新戦力のデビュー最速日は国立でのホーム新潟戦。サマーブレイクを挟んでチームがどんな立ち位置で夏本番を迎えているかはわからないが、後半戦の名古屋を変える、加速させるタレントであることは間違いのないふたりだ。最前線で高さと強さを誇示する背番号27と、切り裂くドリブル、パンチのあるシュートで局面を打開する背番号25がどんな化学反応を起こしてくれるのか。本人たち以上に我々の方が、この1ヵ月が待ち遠しくて仕方ない。

Reported by 今井雄一朗