明治安田生命J2リーグで2か月以上にわたり白星がなく、最下位に沈む大宮アルディージャは、その折り返し初戦となった第22節、いわきFCと対戦した。21位のいわきを迎える6ポイントマッチ、勝てば順位をひっくり返すことができる。是が非でも勝利しなければならない試合だったが、チームの歯車は序盤から噛み合わなかった。開始7分で失点を許すと、オウンゴールを含め前半だけで3失点。後半はシステムを変更し反撃に出ようとしたが、セットプレーから4失点目を喫し、そこで試合の趨勢はほぼ決してしまった。
それでも選手たちは奮闘した。そして75分、大宮が一矢報いた。
富山貴光のオープンパスを受けた泉澤仁がドリブルで前進する。ボックスに入った高柳郁弥は泉澤からのパスを受けると、反転し相手DFの股間を射抜く。ボールはそのまま相手GKのニアサイドを破った。
念願だったはずのプロ初ゴールだが、ガッツポーズも笑みもない。高柳はゴール内に転がったボールを自ら拾うとセンターサークルまで戻し、いわきのキックオフを促した。その途中、柴山昌也と軽くタッチを交わしたのが、ごくささやかなセレブレーションだった。
結果として、さらに1失点を許し1-5と惨敗を喫した大宮。試合後、ゴール裏のサポーターへ挨拶する中、高柳は顔を覆い涙に暮れた。悔しさか、申し訳なさか、心中は察するに余りある。
まだ目は赤く、やや紅潮した面持ちでミックスゾーンに現れた高柳。記念すべきゴールを喜べない状況に「仕方ないっすね」とこぼし、「ペナルティエリア内だったし、状況も状況だったんで(足を)振らなきゃ、と思って、その結果なので良かったと思います」と振り返った。そして、この試合のポイントについて厳しい言葉を続けた。
「球際だとか気持ちだとか、自分自身そういう言葉で片付けてしまうのは好きじゃないんです。でも、今は圧倒的に足りなすぎる。そこはもっと求めていかなきゃいけない、と思っています」
自身も開始早々の5分に警告を受け、「そこからなかなか強くいけなくなってしまった」と自覚する中、自戒を込めたコメントでもある。
これまで以上の、クラブ史上最大の苦境かもしれない。だが、誰も助けてはくれない。この難局は自分たち自身で乗り越えるしかないのだ。
苦い初ゴールを胸に刻み、高柳は前進する。
Reported by 土地将靖