巻き返しを誓い、5月に指揮官交代を決断した琉球。それから約1ヶ月後の6月14日、同チームの強化部スポーツダイレクター補佐で、倉貫一毅監督退任後から暫定的にチームを指揮していた喜名哲裕監督へ正式にバトンを託すと発表した。
暫定監督として見たリーグ戦3試合を2勝1分とし、「FC琉球をもう一度蘇らせるため、J2昇格を果たすため自分の力を注ぎたい」と思い定めた喜名監督。再浮上への足がかりをつけ、なおかつ昨季監督を途中退任した自身の無念を晴らしたいというリベンジ心もあわせ、責務を全うすると決心した。
その再登板を後押ししたのが竹原稔スポーツダイレクター。かつて鳥栖の社長を務め、特に育成面で様々なトライを重ねてきた張本人は「今までの経験を琉球で最大限に還元したい」という思いをもって昨年11月から琉球の強化責任者に就いた。その上で「琉球サッカーの言語化」というチームで戦う上で必要不可欠な共通言語を作り上げるべく、「プレーの原理原則、プレーモデル、サッカーのスタイル、フィロソフィーをチームとして見直し、そのサッカーを成長させていくプロセスを辿ることが理想」と話す竹原スポーツダイレクターは今、琉球メソッドの構築に注力しているところである。それは沖縄の気候、環境、そして沖縄の選手の特徴なども加味した上で、監督が代わるたびにサッカースタイルが変わるのではなく、「琉球のサッカー」という基盤を軸に、それに沿った監督の下でブレずにチームが成長していくことが大事であるということ。その設計図づくりのできる指導者こそ沖縄で育ち、沖縄からプロ選手になり、ヘッドコーチとして18年に琉球のJ3優勝に携わった喜名監督が唯一であると竹原スポーツダイレクターは判断し、沖縄のサッカーを一番よく知る人物に白羽の矢を立てたというわけである。
一方で、チームとしては今年中でのJ2昇格を第一の目標として掲げている以上、成長とともに結果も求める必要がある。ゆえに、両方の責任を喜名監督ひとりに負わせないことも念頭に置き、琉球サッカーの構築をサポートするフットボールコーディネーターを新しく置き、22日付で白井裕之氏(前FC東京ユースカテゴリーコーチ)がトップチームコーチと併せて就任すると発表された。
打たれたカンフル剤が未来を明るく照らす第一歩となるのか。新しい歴史を紡ぐ挑戦が始まろうとしている。
Reported by 仲本兼進