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【取材ノート:今治】現実に正面から向き合う中川風希は、力強く完全復活を目指す

2023年6月15日(木)


後半アディショナルタイム、チームは2点を追っていた。相手のペナルティーエリア内で競り合ったが、バランスを崩し、転倒。ピッチをたたいて悔しがった。まだ、勝負をあきらめていなかったのだ。

6月11日に行われた明治安田生命J3リーグ第13節。ホームの今治里山スタジアムで行われた初のナイトゲームは、松本山雅FCを迎え撃った。FC今治は勝点19で6位、松本は勝点18で7位。ともに負けられない一戦は、3試合連続得点中の松本FW小松蓮に2ゴールを許して0-2で敗れた。


チームにとって、今シーズン初の連敗だ。大混戦のリーグにおいて、手痛い結果に終わった試合後のミックスゾーンに現れた中川風希は、「チームを勝たせる選手にならないといけない。それを、この1カ月強く感じています。今日もチームの結果につなげるプレーができなかった」と、現実に正面から向き合った。

昨季チーム最多タイの12ゴールを挙げたエースが苦しんでいる。新スタジアムのオープニングゲームとなった今季開幕の福島ユナイテッドFC戦で、チームをウノゼロの勝利に導く決勝ゴールを挙げた。

今治の2シーズン目も、幸先の良いスタートを切ったかに思われた。

しかし、3月18日のトレーニング中に右足の甲を痛めてしまう。診断の結果は第3中足骨の亀裂骨折で、全治は約8週間から10週間だった。

それでも、予定より早く戦列に戻ってくる。4月30日の第8節Y.S.C.C.横浜戦(●2-4)でベンチ入りを果たすと、翌節の第9節ヴァンラーレ八戸戦で先発。今季2点目を決めて再びウノゼロ勝利の立役者となった。

早期の復帰の背景には、「プレーできます」という本人の直訴もあった。八戸戦から先発を続けると、松本戦では開幕以来となるフル出場も果たした。だが松本戦では右足に厳重なテーピングが施され、万全とはいえないコンディションであることをうかがわせる。

卓越したテクニックと抜群の得点感覚でネットを揺らすアタッカーだが、八戸戦のゴール以降、まだ得点はない。この1カ月のもどかしさの理由である。

松本戦の15分、自陣から中央を持ち上がり、左足で強烈なミドルシュートを放った。ゴール右下の隅に飛んだ地をはうシュートは、松本のGK村山智彦がかろうじてはじいた。チームが先制されたのは、このビッグチャンスの直後である。

連敗を脱出し、3試合ぶりの勝利を目指す第14節テゲバジャーロ宮崎戦に向けたトレーニングで、シュートをミートしてしっかり枠内に飛ばそうとする姿勢が際立った。豪快さより、うまさでうならせるプレーの原点回帰だ。

けがで離脱中、元日本代表監督の岡田武史代表取締役会長に、こう言われたという。「体幹を強くすれば、本田(圭佑)のように良い選手になれるぞ」。

勝負所でグッと力強く踏ん張り、華麗にゴールを決める。エースの完全復活が、チームを再び上位戦線へと導く。

Reported by 大中祐二