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【取材ノート:大宮】もう1つの“復活”劇。ルーキー阿部来誠が踏み出した第一歩

2023年6月15日(木)


天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会2回戦、大宮アルディージャはジェフユナイテッド千葉に辛勝し、3回戦へ駒を進めた。約2か月ぶりの公式戦勝利、そして右アキレス腱断裂から約1年ぶりの復帰を自らの堅守で祝った南雄太の復活に、試合後のベンチは大いに沸いた。その中でもう1人、“復活”を遂げていた選手がいた。この試合がプロデビュー戦となった阿部来誠である。

まだアカデミー所属だった昨年1月。阿部はトップチームの沖縄キャンプに帯同していた。将来有望な、トップ昇格も見込める素材が開幕前のキャンプに参加するのは通例で、阿部もその1人だった。

だが、期待にあふれていたはずのキャンプは一気に暗転する。千葉との練習試合、途中出場の直後に敵味方の競り合いに巻き込まれる形で、右膝を負傷してしまった。

右膝前十字靭帯と内側側副靭帯の断裂および半月板損傷、全治8か月の重傷である。U18チームと、そして自身の将来をも懸かったアカデミーの最終学年で、これほどのものを背負わされた重さは計り知れない。

「怪我をした直後は辛かったですし、サッカーをやめたいと思うぐらいの時もあった」

それでも、周囲のサポートを受けながら地道にリハビリに取り組み続けた。そして11月20日、高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2022EAST第20節、市立船橋戦の84分に、途中出場でついに復帰を果たしたのだ。

結局、昨シーズンはラスト3試合に6分、21分、30分と時間制限付きで出場したのみに終わった。リハビリの一環のようなもので、本当の意味での復活は、トップ昇格後のデビュー戦へお預けとなった。



「できなかった分、どんどんアピールしてやっていきたいという気持ちが強いです」

そう意気込んだプロ1年目の今シーズンだったが、明治安田生命J2リーグ第7節の東京ヴェルディ戦に初めてメンバー入りを果たしたものの出番なし。その後は試合に絡めずにいた中で、ようやく訪れた2度目のチャンスがこの試合だった。


スコアレスの前半を終え、後半開始時からピッチに入る。怪我を負った同じ相手にプロデビューというところに、やはり因縁を感じずにはいられない。

中野誠也が先制ゴールを挙げると、右サイドハーフに入った阿部も徐々に攻撃に絡む。55分にはミドルシュートを放ち、試合終盤には、柴山昌也がいる中でもセットプレーのキッカーを任された。

「(シュートは)ああいうところで決められるようにならないと怖い選手になれないですし、練習からもっとやっていきたいと思います」

「キックは自信を持ってやっている中で、フリーキックでああいう形(ミス)になってしまった。チャンスをつぶしてしまうのはもったいない。もっとやらないといけない」

自ら「50点ぐらい」と評したデビュー戦を振り返り、“もっと”という言葉が続いたことはポジティブにとらえたい。もちろん手応えもあった。



「貢献できたという実感はあるし、今後につなげていきたい。スタートから出られれば一番いいですけど、与えられたチャンスをしっかりつかめるようにやっていきたい」

まだ第一歩である。アカデミー時代に見せた華麗なプレーの数々を、またプロの舞台で見せてほしい。

Reported by 土地将靖