「キーパーはボランチだといつも言ってるから、(左右の)センターバックはシャドーかサイドハーフなんですよ」
藤枝MYFCの須藤大輔監督が掲げる「超攻撃的エンターテイメントサッカー」においては「センターバックとキーパーが肝になる」存在であり、攻撃においては上記のような役割が求められている。
藤枝の基本布陣は3-4-2-1だが、攻撃時にはボランチが下がるのではなくGKが上がって3バックの中央の選手(おもに川島將)と2バック状態になり、積極的にビルドアップに参加する。だから「GKはボランチ」という言い方になる。
そして、3バックの左右の2人はワイドに開いて高い位置をとる。4バックにおけるサイドバックのような位置づけだが、それ以上に攻撃的な姿勢が求められるため「シャドーかサイドハーフ」という言い方になる。その前にいる左右のウイングバックは、3トップのウイングのようなイメージだ。
そうした超攻撃的センターバック像をわかりやすく体現したのが、前節・大宮戦で右のセンターバックを務めた久富良輔だった。開始早々から右ウイングバックの久保藤次郎をどんどん追い越して大宮守備陣の混乱を招き、ボランチやシャドーの選手とも連携しながら右サイドの攻撃を活性化。そして18分には、シャドーの横山暁之からのパスでタイミング良く裏に飛び出し、逆サイドのウイングバック・榎本啓吾の先制点をアシストした。
こうして3試合ぶりに流れの中からのゴールが生まれたことによって、やや停滞気味だった攻撃が一気に勢いづき、右サイドから多くのチャンスを生み出して前半だけで3得点。まさに本来の超攻撃的スタイルに火をつける働きを見せた。
このようにセンターバックが積極的に高い位置をとることの効果について、須藤監督は次のように語る。
「まず相手のサイドハーフがついてくるので、全体的に(相手の)ラインが低くなること。そこでサイドハーフがついてこなければ数的優位を作れる。あとは前につけてセンターバックが裏に走ることで、ウイングバックにスペースができる。ドミ(久富)ぐらいフリーランニングしてくれれば、シャドーやトップのところも空いてくる。相手を引きこませて、自分たちの人数も増えるから混むように見えるけど、スペースを作り出すことに関与しているというのが、僕の中の理論なんです」
大宮戦の先制点は、まさにその理論を象徴するような形だった。
「ドミが(久保)藤次郎に預けて追い越していって、そこからやり直してスルーパスを受けた。(右サイドが)混むんですけど、彼が1枚いくことによってプラスワンができるし、スペースもできた。相手は全体がスライドしなきゃいけないから、逆サイドが開いて(榎本)啓吾がフリーで決められました」(須藤監督)
また、右サイドが詰まりすぎて攻めきれなかったとしても、やり直してサイドチェンジすれば左に広大なスペースが生まれているので、榎本も得意のドリブルを存分に発揮することができる。
シャドーには横山や岩渕良太など狭いスペースでも決定的な仕事ができる選手がいて、両ウイングバックはドリブルも得点力もある。そして最前線には得点ランク首位の渡邉りょうがいて、クロスに合わせるうまさもある。藤枝の武器を生かす意味でも、センターバックの攻撃参加はまさに「肝」になっているわけだ。
久富自身も「前へのベクトルを出して攻撃的にいこうというのは、自分の持ち味でもあるし、すごく意識しています。ただ、上がるにしてもタイミングというのが本当に大事なので、そこもすごく意識していますし、その瞬間を見逃さないというのが以前よりできるようになってきたと思います」と語り、「やっていて本当に楽しいです」とつけ加えた。
須藤監督は、持ち前のサービス精神でわざと誇張した言い方をすることもあるが、「今までのセンターバック像をぶっ壊してほしい」という言葉に誇張はない。全員攻撃・全員守備で、観ている側もやっている選手も楽しい藤枝スタイル。それを堪能するためにも、左右のセンターバックの動きには今後もぜひ注目してほしい。
Reported by 前島芳雄
藤枝MYFCの須藤大輔監督が掲げる「超攻撃的エンターテイメントサッカー」においては「センターバックとキーパーが肝になる」存在であり、攻撃においては上記のような役割が求められている。
藤枝の基本布陣は3-4-2-1だが、攻撃時にはボランチが下がるのではなくGKが上がって3バックの中央の選手(おもに川島將)と2バック状態になり、積極的にビルドアップに参加する。だから「GKはボランチ」という言い方になる。
そして、3バックの左右の2人はワイドに開いて高い位置をとる。4バックにおけるサイドバックのような位置づけだが、それ以上に攻撃的な姿勢が求められるため「シャドーかサイドハーフ」という言い方になる。その前にいる左右のウイングバックは、3トップのウイングのようなイメージだ。
そうした超攻撃的センターバック像をわかりやすく体現したのが、前節・大宮戦で右のセンターバックを務めた久富良輔だった。開始早々から右ウイングバックの久保藤次郎をどんどん追い越して大宮守備陣の混乱を招き、ボランチやシャドーの選手とも連携しながら右サイドの攻撃を活性化。そして18分には、シャドーの横山暁之からのパスでタイミング良く裏に飛び出し、逆サイドのウイングバック・榎本啓吾の先制点をアシストした。
こうして3試合ぶりに流れの中からのゴールが生まれたことによって、やや停滞気味だった攻撃が一気に勢いづき、右サイドから多くのチャンスを生み出して前半だけで3得点。まさに本来の超攻撃的スタイルに火をつける働きを見せた。
このようにセンターバックが積極的に高い位置をとることの効果について、須藤監督は次のように語る。
「まず相手のサイドハーフがついてくるので、全体的に(相手の)ラインが低くなること。そこでサイドハーフがついてこなければ数的優位を作れる。あとは前につけてセンターバックが裏に走ることで、ウイングバックにスペースができる。ドミ(久富)ぐらいフリーランニングしてくれれば、シャドーやトップのところも空いてくる。相手を引きこませて、自分たちの人数も増えるから混むように見えるけど、スペースを作り出すことに関与しているというのが、僕の中の理論なんです」
大宮戦の先制点は、まさにその理論を象徴するような形だった。
「ドミが(久保)藤次郎に預けて追い越していって、そこからやり直してスルーパスを受けた。(右サイドが)混むんですけど、彼が1枚いくことによってプラスワンができるし、スペースもできた。相手は全体がスライドしなきゃいけないから、逆サイドが開いて(榎本)啓吾がフリーで決められました」(須藤監督)
また、右サイドが詰まりすぎて攻めきれなかったとしても、やり直してサイドチェンジすれば左に広大なスペースが生まれているので、榎本も得意のドリブルを存分に発揮することができる。
シャドーには横山や岩渕良太など狭いスペースでも決定的な仕事ができる選手がいて、両ウイングバックはドリブルも得点力もある。そして最前線には得点ランク首位の渡邉りょうがいて、クロスに合わせるうまさもある。藤枝の武器を生かす意味でも、センターバックの攻撃参加はまさに「肝」になっているわけだ。
久富自身も「前へのベクトルを出して攻撃的にいこうというのは、自分の持ち味でもあるし、すごく意識しています。ただ、上がるにしてもタイミングというのが本当に大事なので、そこもすごく意識していますし、その瞬間を見逃さないというのが以前よりできるようになってきたと思います」と語り、「やっていて本当に楽しいです」とつけ加えた。
須藤監督は、持ち前のサービス精神でわざと誇張した言い方をすることもあるが、「今までのセンターバック像をぶっ壊してほしい」という言葉に誇張はない。全員攻撃・全員守備で、観ている側もやっている選手も楽しい藤枝スタイル。それを堪能するためにも、左右のセンターバックの動きには今後もぜひ注目してほしい。
Reported by 前島芳雄