いったいいつ抜け出せるのか。明治安田生命J2リーグ第19節を終え11戦勝ちなし、2分9敗といまだトンネルに入ったままの大宮アルディージャ。そのトンネルの闇は深く、選手を代え、システムを変え、そして監督交代という荒療治に至っても、いまだ光明を見出せずにいる。
大量失点での惨敗となってしまった第18節ヴァンフォーレ甲府戦。昨年は古巣相手にプレーできなかった泉澤仁が、切れ味鋭いプレーでかつてのサポーターに“恩返し”した。2点ビハインドの中で後半開始から投入されると、得意のフェイント“ゼロヒャク”で対峙する甲府DFを置き去りにし、正確なクロスを富山へ送ってゴールを演出した。完璧なアシストに自画自賛かと思いきや、厳しい言葉が口を衝く。
「その後ですよね。その後から、相手のサイドハーフとボランチを含めて3枚来てくれていたのに、周りとの関係性がうまくいかなくて、そこが本当にもったいないと思いながらやってました」
サイドバックだけでなく、サイドハーフやボランチまでが泉澤のマークやカバーに入るのであれば、その分、他のスペースは空いているはず。そこを生かした連係を打ち出すことができなかった。
「ペナ角に誰か走り込むとか、それも同じスピードじゃなくて変化をつけるとか、そういうのがあればもっと面白いサッカーができたと思います」
続く第19節水戸戦は、自身8試合ぶりの先発出場で、いつにも増して積極的にゴールを狙っていった。だが、先制され、一時は追いついたものの再度突き放される展開に、試合後は反省の弁が続いた。
「簡単に失点しちゃうのがもったいない。そこを跳ね返せるようになれば、もっと勝点を拾えてくるのかな」
「逆に、ゴールを取り切れるところで取り切る力もつけていかないといけない。むしろ、そっちのほうが問題かなと思います」
原崎体制以降の水戸戦までの3試合で、シュート数では負けていない。それだけですべてを計れるものではないが、やはりチャンスの数に比してゴールが少ないという印象はある。勝点3のためには相手よりも多くゴールを奪う必要があり、それには得点力の向上が不可欠。泉澤を含め、アタッカー陣の模索はまだまだ続く。
大敗を喫した甲府戦後、チームはゴール裏サポーターから大音量のブーイングを浴びた。多くの選手がうなだれる中、泉澤は「うれしかった」と明かす。
「まだ一緒に戦ってくれてるんだ、そう思うと、うれしかったですね」
“好きの反対は嫌いではなく無関心”などと言われる。ブーイングされているうちが華、どうでもよくなればやがて誰も姿を見せなくなる。
悔しさはないのか?申し訳なさはないのか?そんなことはないはずだ。何が何でも報いなければならない。
Reported by 土地将靖