初挑戦のJ2リーグでも快調なスタートを切り、一時はJ1昇格プレーオフ圏内(6位)に入って旋風を巻き起こした藤枝MYFCだったが、ここに来て大きな苦境を迎えている。
チームの心臓と言えるキャプテンの杉田真彦が14節・山形戦で右膝を負傷して長期離脱。ボランチでコンビを組む水野泰輔も長期ではないが負傷離脱し、その中で4連敗。選手もサポーターも楽しみにしていた“静岡三国決戦”(静岡ダービー)2連戦にも連敗して、順位も14位まで落ちた(6勝2分8敗)。
一昨年7月に就任した須藤大輔監督の下で順調な成長を続けてきた藤枝だが、4連敗は須藤体制では初めてで、これまででもっとも苦しい時期を迎えている。
元々選手層の厚みという面では不安はあった。今季も守備の要であるセンターバックの川島將が負傷離脱した時期(2~5節)は1勝3敗と苦しい戦いが続いた。後半の選手交代で思うようにパワーアップできないという課題もあった。ただ、そこはクラブ規模という観点ではしかたない面もある。
それを補うには、選手個々が成長していくしかない。そして、その意味では苦しい中で光明も見えている。
主軸のボランチ2人を欠く中で、ボールをうまく前に運べないという問題が出ていたが、清水戦の後半から本来は攻撃的MFの横山暁之と平尾拳士朗の2人にボランチを任せたことで、ビルドアップがかなりスムーズになった。横山も平尾も相手のプレッシャーがある中でも恐れずにボールを受けて前を向く能力に長けており、その特徴が大いに生かされている。
とくにルーキーの平尾は、静岡三国決戦の2試合で「自分の中でも良い感触があった」と大きな自信をつけ、積極的なプレーが増えてミスも減っている。
もちろん、この組み合わせでは守備の面に不安はあるが、ボールを握り続けて失わなければピンチも生じない。「攻撃は最大の防御」というのは、須藤MYFCの基本精神でもある。
また前節・磐田戦では、今季加入したブラジル人助っ人=アンデルソンが初先発し、浦和から期限付き移籍してきた工藤孝太がJリーグ初出場。平尾と同じ大卒ルーキーの小関陽星は清水戦でJデビューして、磐田戦にも出場。それぞれが昨年までJ1にいたチームに対しても通用する力を示した。
センターバックの山原康太郎(平尾、小関と同期)もレギュラー組を脅かす存在に成長し、「プレッシャーは大きいですが、自信を持ってやり続けられています」と言う。磐田戦で11試合ぶりに出場したGK上田智輝は、攻守に高いパフォーマンスを発揮した。
ここに来てサブ組の台頭が著しいことは、チームを活性化する意味でも大きな価値がある。またそれは、このチームが日々質の高いハードな練習を繰り返している成果でもある。
とはいえ、それで一気にV字回復するかというと…J2はそれほど甘くない。対戦相手も藤枝をかなり分析し、的確に弱点を突くようになってきた。カウンターやセットプレーからの失点は今も目立っている。
だが、須藤監督は自分たちのウィークポイントを十分に理解しつつも、その対症療法に重点を置くのではなく、ストロングポイントで凌駕して相手につけいる隙を与えないという方向性にこだわり続けている。
それでこそ「超攻撃的エンターテイメントサッカー」だ。
今後もノーリスクの戦いを選択することはないので、連敗や大敗もあるかもしれない。だが、それでも超攻撃的な姿勢を変えることなく、前向きな挑戦を続けながら一歩一歩成長を重ねていく。試合単体だけでなく、そうした成長過程をチーム全体で表現していくドキュメンタリーも、価値あるエンターテイメントと言えるのではないだろうか。
Reported by 前島芳雄
チームの心臓と言えるキャプテンの杉田真彦が14節・山形戦で右膝を負傷して長期離脱。ボランチでコンビを組む水野泰輔も長期ではないが負傷離脱し、その中で4連敗。選手もサポーターも楽しみにしていた“静岡三国決戦”(静岡ダービー)2連戦にも連敗して、順位も14位まで落ちた(6勝2分8敗)。
一昨年7月に就任した須藤大輔監督の下で順調な成長を続けてきた藤枝だが、4連敗は須藤体制では初めてで、これまででもっとも苦しい時期を迎えている。
元々選手層の厚みという面では不安はあった。今季も守備の要であるセンターバックの川島將が負傷離脱した時期(2~5節)は1勝3敗と苦しい戦いが続いた。後半の選手交代で思うようにパワーアップできないという課題もあった。ただ、そこはクラブ規模という観点ではしかたない面もある。
それを補うには、選手個々が成長していくしかない。そして、その意味では苦しい中で光明も見えている。
主軸のボランチ2人を欠く中で、ボールをうまく前に運べないという問題が出ていたが、清水戦の後半から本来は攻撃的MFの横山暁之と平尾拳士朗の2人にボランチを任せたことで、ビルドアップがかなりスムーズになった。横山も平尾も相手のプレッシャーがある中でも恐れずにボールを受けて前を向く能力に長けており、その特徴が大いに生かされている。
とくにルーキーの平尾は、静岡三国決戦の2試合で「自分の中でも良い感触があった」と大きな自信をつけ、積極的なプレーが増えてミスも減っている。
もちろん、この組み合わせでは守備の面に不安はあるが、ボールを握り続けて失わなければピンチも生じない。「攻撃は最大の防御」というのは、須藤MYFCの基本精神でもある。
また前節・磐田戦では、今季加入したブラジル人助っ人=アンデルソンが初先発し、浦和から期限付き移籍してきた工藤孝太がJリーグ初出場。平尾と同じ大卒ルーキーの小関陽星は清水戦でJデビューして、磐田戦にも出場。それぞれが昨年までJ1にいたチームに対しても通用する力を示した。
センターバックの山原康太郎(平尾、小関と同期)もレギュラー組を脅かす存在に成長し、「プレッシャーは大きいですが、自信を持ってやり続けられています」と言う。磐田戦で11試合ぶりに出場したGK上田智輝は、攻守に高いパフォーマンスを発揮した。
ここに来てサブ組の台頭が著しいことは、チームを活性化する意味でも大きな価値がある。またそれは、このチームが日々質の高いハードな練習を繰り返している成果でもある。
とはいえ、それで一気にV字回復するかというと…J2はそれほど甘くない。対戦相手も藤枝をかなり分析し、的確に弱点を突くようになってきた。カウンターやセットプレーからの失点は今も目立っている。
だが、須藤監督は自分たちのウィークポイントを十分に理解しつつも、その対症療法に重点を置くのではなく、ストロングポイントで凌駕して相手につけいる隙を与えないという方向性にこだわり続けている。
それでこそ「超攻撃的エンターテイメントサッカー」だ。
今後もノーリスクの戦いを選択することはないので、連敗や大敗もあるかもしれない。だが、それでも超攻撃的な姿勢を変えることなく、前向きな挑戦を続けながら一歩一歩成長を重ねていく。試合単体だけでなく、そうした成長過程をチーム全体で表現していくドキュメンタリーも、価値あるエンターテイメントと言えるのではないだろうか。
Reported by 前島芳雄