課題は明確で、アプローチもしっかり見えている。あとは結果と内容を、目に見える形で示すだけである。長谷川健太監督も奮起を明言している“プロ2年目トリオ”のひとり、吉田温紀は実戦の場を求め、その時のためにひたすら爪を研ぐ。「ルヴァンカップで活躍していかないと、リーグ戦のメンバーに入ったり、スタメンで試合に出させてもらえない」。次週の水曜日はターンオーバーが確実視されるカップ戦、ホームでの神戸戦である。目の前にある広島とのリーグ戦も重要だが、水曜日からステップアップしていきたい選手たちもまた、名古屋グランパスの中には数多い。
同期の豊田晃大、そして甲田英將よりも“実績”では一歩リードする選手である。リーグ戦出場では甲田が上も、昨季のルヴァンカップではセットプレーで得点をマーク。長身のボランチで、ニアサイドで合わせる形は「自分が相手を外して決めるというのはユースの頃から得意だった」という武器のひとつ。5月7日のHonda FCとの練習試合でもセットプレーから決勝点を奪い、「セットプレーでも自分はポイントになれるのがデカいと思っている」と自信を見せていた。現状はチーム編成の関係で3バックに入ることもあるが、本来の、そして一番やりたいのはやはりボランチというポジション。そのために必要なのは一にも二にも走力であることはわかっている。
「ボランチでやるにはもっと走らないといけないと思います。センターバックをやるならもっと強くならないといけないですし、どっちにしてもやっぱり足りない部分はある。これからもフィジカルの部分だったり、アジリティの部分だったりは上げていかないといけないと感じています。守備でも攻撃でも、もっとボールに関わっていかないといけないと思うし、やっぱりボールに関わるにはもっと走っていかないと」
チームに求められるボランチ像は明確だ。米本拓司と稲垣祥。彼らがいるといないとではチームの挙動そのものが変わってくるほどに影響力は大きく、その運動量や強度を出せてこそ自分の持ち味を出す余地が生まれる。強烈なインテンシティ抜きに名古屋のボランチは務まらず、そのために吉田はとにかく“動く”ことを考える。長短のパス、スルーパスなど特徴を出すのはその次だ。
「ボールを散らしたりまではできたところもあったと思うけど、動きが止まっていたり、前に出ていく部分も少なかった。ヨネくんたちは試合を見ていてもめちゃくちゃ走っているなと思いますし、やっぱり自分もあれぐらいボールを奪いに行ったり、前に出て行ったりしないと試合に出られません。良い先輩方がたくさんいるので、自分もそこに追いついて、追い越せるようにしたいです。もっと長い距離を走ってでも“奪いに行く”っていう部分がまだまだ足りないです」
一方でパサー、ゲームメイカーとしての面でも課題はまだまだ残る。練習試合などでよく聞かれる周囲の声が、「もっとボールを受けに行け!」という声だ。吉田もそれは自覚しており、しかしプレースタイルとのバランスどりに今は時間がかかっている。ボールを受けに行く、しかしそこに相手のアプローチがあれば、出し手はパスを躊躇するもの。それでも受けられる自身はあるが、それだけの信頼感を築くまでには至っていない。そこにも実は運動量の問題が絡んでおり、巡り巡って吉田の課題は、やはり「走力」というところに帰結するのだ。
「自分はボールをなるべく自然体で受けたいんですよね。でも、そうしている間に相手に詰められているというのは確かなことで。そのためにももっと動いて受けたいんですが、それにはやっぱり走力が要る。ボールを受ける位置については、攻撃の部分ではけっこう相手も見ながらポジションが取れるんですけど。守備でもまだ足がついてこなかったり、頭では『行った方がいい』と思っているんですけど、身体がついてこなかったりという部分もある。コンディションを上げることでも、祥くんやヨネくんみたいにもっと走る選手になりたいです」
いわゆるセットプレーでの“一発”は持っている選手だけに、そこで結果を残しつつ、ボランチとしての自分を強調していきたいところ。後輩の貴田遼河がまさにそこからプロ契約を勝ち取ったように、吉田もまた目に見える結果から出場機会を、そしてリーグ戦メンバーへの道のりを目論む。スタメンボランチのポジションは鉄板ながらも、決して層が厚いわけではない。次週から再開するルヴァンカップには楽しみも多いが、名古屋の背番号31がどんなプレーを見せてくれるのかも、興味深い見どころのひとつである。
Reported by 今井雄一朗