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【取材ノート:長野】ホーム開幕戦で奈良に完敗。『賢守猛攻』の現在地を探る

2023年3月21日(火)


「3試合目でいろいろなことが出たのは良い部分もある。同じことを繰り返さないためにも、しっかりと反省して改善していくことが大事」。チーム最年長・宮阪政樹の弁だ。AC長野パルセイロはホーム開幕戦となる明治安田生命J3リーグ第3節で、昇格組の奈良クラブに0-3と敗れ、今季初黒星を喫した。たかが1敗、されど1敗――。さまざまな見解があるだろうが、今季のスタイルが発展途上であることは言うまでもない。


敗因は一つではなく複合的だと考えられるが、シュタルフ悠紀監督が真っ先に挙げたのは「ミスが多かった」という点だ。1失点目はDFのクリアミスとGKのポジショニングミス、2失点目はパスミス、3失点目はデュエル(1対1)の軽率さと、それぞれに個人のエラーが絡んでいた。とはいえ守備面だけを見れば、組織としての大きなエラーは出てきていない。個々が改善を図りさえすれば、自ずと失点も減っていくことだろう。

一方、気がかりなのはビルドアップだ。今季は攻撃時に3-2-4-1の布陣を敷き、ウイングバックが基本的に高い位置を取る。後方の3-2を中心にボールを回し、相手のプレスラインを突破することができれば、その後は前線の5人にダブルボランチの片割れなども加わって厚く攻められる。しかし奈良戦では、プレスラインを突破するまでの過程において、停滞してしまう場面が多く見られた。

ウイングバックは高い位置を取りながらも、状況によって低い位置を取り、ビルドアップのサポートに入る。前半は右サイドからの攻撃を主体とし、右ウイングバックの船橋勇真が頻繁に降りてきた。だが、これが奈良の術中にハマる形となっていたのだ。

奈良は守備時に4-4-2のブロックを敷き、左サイドハーフの嫁阪翔太がやや中央寄りの位置を取っていた。長野はそれによって空いた右サイドのスペースに船橋が降りるも、奈良は嫁阪のスライドに加え、左サイドバックの加藤徹也の縦ずれで自由を与えない。2トップのパスコースの切り方も含め、長野のビルドアップを右サイドに誘導させて奪うような形だった。

「今日は右から極力攻めたかったところを、左から攻めたほうが良かったのではないかと思った」。そう宮阪が話したように、左サイドも有効活用できれば良かったが、前半はほぼ右サイドでの攻撃に終始していた。ボランチの一角を担う宮阪は、開幕節のテゲバジャーロ宮崎戦後にも「相手がどうやってプレスを掛けてきているかの認知」を課題に挙げていたが、今後も相手のプレスの掛け方に応じた臨機応変さが求められる。

それは立ち位置についても同様だ。前半途中にはボランチの宮阪が左サイドに開き、左センターバックの秋山拓也がボランチの位置に入るシーンが見られた。「前の動きのタイミングや、1人が下がって1人が上がるというような連動性が出てくればもっとうまくいく」と秋山が言うように、ビルドアップで前進するには連動性が必要とされる。奈良戦は全体的に動きが少なく、相手からすれば捕まえやすい状況になっていた。ディフェンスラインの背後へのアクションも含め、各々が臨機応変に立ち位置を変えていくことも重要であろう。

随所にうまくいっているシーンも見られたが、パスの精度や強弱、テンポといった部分を見ても、まだまだ満足のいくレベルにはないはずだ。ブロックを敷きながら賢く守り、いざ攻撃となった際には猛烈にパワーを注ぐ――これをシュタルフ監督は『賢守猛攻』と表現している。その猛攻を仕掛けるためにも、ビルドアップの成熟は必要不可欠。キャンプから積み上げてきたスタイルの“真価”と“進化”が問われる。

Reported by 田中紘夢