2023明治安田生命J1リーグ第2節、アビスパ福岡にとってのホーム開幕戦は終盤、金森健志の劇的な決勝ゴールでセレッソ大阪を2-1で下し、今シーズン初勝利を挙げた。高揚感に包まれたベスト電器スタジアムの雰囲気とは対照的に試合後、ミックスゾーンに現れた奈良竜樹は冷静に福岡のキャプテンらしい言葉で試合を振り返った。
「(試合)途中で入った(前嶋)洋太と(金森)健志が(アシストとゴールという形で)結果を出しましたけれども、その他にも(三國)ケネディと(井手口)陽介と(佐藤)凌我と、全員がチームを支えていて、そういう途中から出てきた選手のパワーやエネルギーが、あのゴール(決勝点)につながったと思います。やはり途中から出た選手が結果を出すということがチームとして良い競争になるので、最初から出た選手もすごく良かったし、今日ベンチに入って出られなかった選手も良い準備をしていましたし、メンバーに入れなかった選手も1週間良い準備をしていましたし、そういうサイクルというのがより強いチームを作っていくと思うので、そういう意味では良い勝ち方ができたかなと思います」
福岡がいつも大切にしている言葉。それは「一体感」。日ごろから互いをリスペクトし合い、力を高め合うことで、いつ、どの選手が出ても常に自分たちのスタイルを発揮する。長谷部茂利監督が就任して4年目。苦しい時もチームだけではなく、福岡に関わる全ての人々がこの一体感に支えられ、個の能力の高い選手が揃うJ1の強豪クラブ相手にも堂々と渡り合ってきた。そんな福岡を引っ張るキャプテンを同郷の前寛之から今シーズン引き継いだのが熱き姿勢でサポーターを虜にし、北海道出身ながら「博多の漢」と呼ばれる奈良なのだ。
チームの一体感を評する一方で3CBの中央に入る守備の要として課題も口にしている。「結果として勝てたから1失点で踏ん張れたと言えますけれど、本当は0失点で勝つのが福岡の戦い方」
「良い守備からの良い攻撃」を掲げる福岡にとって、堅い守りはチームの根幹。前線から連動してプレスを仕掛け、強度高くボールを奪って縦に速く攻める。例え、押し込まれても粘り強く全員で耐えながらチャンスと見るや意図的にボールを運んで前に出る。
C大阪戦で見せた1点目はまさにスタイルの1つ。図ったタイミングで全員がプレスのスイッチを入れ、見事なショートカウンターで前がゴールを奪った。だからこそ、奈良が問題にしているのはここからだ。
「遠い位置だから大丈夫じゃなくて、そういうところから決め切れる選手もいるのがJ1のチームなので、やはりそういうところですね。失点する前も何本か危ないミドルシュートを打たれているところもあったし、失点シーンは顕著にあそこまで1人で運ばれてしまうというのは、やはり1点リードした甘い雰囲気が出てしまったと思う」
先制点を奪ってからわずか12分後の出来事。堅守と呼ばれることも多い今の福岡だが、リーグ戦では昨年7月のアウェイ湘南戦以来無失点試合がない中で、奈良の言葉からは悔しさが滲み出ていた。
「1-0からさらに引き込んでカウンターで2点目でもいいし、しっかりと自分たちでボールを持って相手が出てくるところを(いなしていくというのも)しっかり取り組んでいるところなので、良い勝ち方だったけど、こういう勝ち方よりももっと福岡らしい勝ち方を目指していかないといけないと思います」
飽くなき向上心を持ってチームを引っ張る新キャプテン奈良。初勝利に浮かれることなく、無失点での勝利を目指して次なる戦いに挑む。
Reported by 武丸善章